シロウリガイ

シロウリガイ（白瓜貝）とは

シロウリガイ（学名: Calyptogena soyoae）は、マルスダレガイ目オトヒメハマグリ科に属する二枚貝です。深海、特にプレート活動に伴ってメタンなどが湧き出る冷水湧出帯に生息し、特有の生態系を構成する重要な生物の一つです。1955年に相模湾で発見され、1957年に新種として記載されました。学名の soyoae は、発見に使用された調査船「蒼鷹丸」に由来しています。

発見と分布

シロウリガイの死殻は、1955年に東京湾口から相模トラフにかけての海底谷で発見されました。その後、1984年に潜水調査船「しんかい2000」によって、相模湾の深海で生きた個体が初めて確認されました。現在、シロウリガイは相模湾の水深800-1200mの活動中の断層に沿って分布していることが知られています。

日本周辺の冷水湧出帯には、シロウリガイの他にも、様々な種類のシロウリガイが生息しています。例えば、浜名湖沖の天竜海底谷にはノチールシロウリガイやテンリュウシロウリガイ、駿河湾にはスルガシロウリガイ、沖縄本島北部にはエンセイシロウリガイ、日本海溝にはナギナタシロウリガイなどが確認されています。

生態

シロウリガイは、深海の冷水湧出帯に密集して生息し、大きなパッチを形成します。小型の個体は海底に深く潜っていますが、成長すると殻の一部を海水中に露出させて生活します。シロウリガイが生息する場所では、湧出する冷水に含まれるメタンを、堆積物中の硫酸塩還元細菌が消費し、硫化水素が生成されます。シロウリガイは、この硫化水素を体内に取り込み、鰓に共生する化学合成細菌に供給します。細菌は硫化水素を利用して有機物を合成し、シロウリガイはその有機物を得て生きています。そのため、シロウリガイは他の二枚貝とは異なり、プランクトンやデトリタスを摂食するための消化管が退化しています。

深海の二枚貝は、餌となるプランクトンが少ないため小型の種が多いですが、シロウリガイは化学合成細菌に依存することで、深海産の貝としては非常に大きく成長することができます。

形態

シロウリガイの殻は長楕円形で、殻長は約14cmです。殻の頂点は前方に寄り、後方に長い靭帯があります。また、腹縁がくぼんでいるのが特徴です。

深海の化学合成生物群集

シロウリガイは、冷水湧出帯だけでなく、熱水噴出孔や鯨骨生物群集といった、深海の化学合成生物群集の一員としても知られています。熱水噴出孔には、シロウリガイと同属のガラパゴスシロウリガイが生息しています。これらの生物群集は、太陽光の届かない深海で、化学物質を利用して生きる特異な生態系を形成しています。

関連生物

チューブワーム: シロウリガイと同様に、深海の化学合成生物群集を構成する代表的な動物です。
シャコガイ: 浅い海の熱帯に生息し、外套膜に共生藻類を持つことで大きく成長します。シロウリガイとは異なる生態ですが、共生によって成長する点で共通しています。

参考文献

橋本惇 (1997), “地球の割れ目にすむ貝”, in 奥谷喬司, 貝のミラクル－軟体動物の最新学－, 東京: 東海大学出版会, ISBN 4-486-01413-8
松隈明彦 (1986), “マルスダレガイ目”, in 桜井良三, 決定版生物大図鑑－貝類－, 東京: 世界文化社

外部リンク

* 藤原義弘, 小島茂明, 溝田智俊, 牧陽之助, 藤倉克則, 日本海溝産オトヒメハマグリ科ナラクシロウリガイ Calyptogena fossajaponica の鰓中に共生する化学合成細菌の系統学的特徴」『貝類学雑誌』 59巻 4号 2000年 p.307-316, doi:10.18941/venusjjm.59.4_307

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