シンガー (企業)

シンガー（Singer Corporation）

シンガーは、世界的に知られるミシン製造会社であり、その歴史は1851年にまで遡ります。アメリカ人のアイザック・メリット・シンガーが、ニューヨークの法律家エドワード・C・クラークと共に「I.M. Singer & Co.」として創業しました。その後、1865年に「Singer Manufacturing Company」、1963年には「The Singer Company」と社名を変更しました。当初はニューヨーク市内の工場で製造を行っていましたが、現在ではナッシュビル近郊のラ・バーグに本拠地を置いています。

歴史

シンガーの歴史の中で特筆すべき出来事の一つに、1911年にスコットランドのクライドバンクにあった同社最大の工場で発生したストライキがあります。12名の女性工員が製造工程の再編に抗議したことがきっかけで、1万1000人もの従業員がストライキに参加しました。ストライキ終結後、シンガーはストライキのリーダーや組合員を含む400名もの従業員を解雇しました。この中には、後にイギリス共産党の初代議長を務めたアーサー・マクマナスも含まれていました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦中、シンガーは各国政府と兵器製造契約を結んだため、ミシンの製造を一時停止しました。アメリカ国内の工場では、アメリカ軍向けにノルデン爆撃照準器、M1ガーランドライフル、M1911拳銃などを製造し、ドイツ国内の工場ではドイツ国防軍に兵器を供給しました。

特に、1939年にアメリカ政府からM1911A1拳銃の生産研究を命じられたことは、シンガーの歴史において重要な出来事です。1940年には、500丁の教育的注文を受けましたが、シンガーは自社の専門知識が大砲や爆撃照準器に向いていると判断し、拳銃の製造設備を他社に移管しました。このため、シンガー製の拳銃はわずか500丁しか存在せず、コレクターの間で高値で取引されています。状態の良いものであれば、数万ドルで取引されることもあります。

多角化

1960年代に入ると、シンガーは多角化戦略を推進し、様々な企業を買収しました。1965年には電卓製造会社のフリーデン、1966年にはパッカードベル、1968年にはゼネラル・プレシジョン・イクイップメント・コーポレーションを買収しました。しかし、1980年代後半には、これらの部門を売却し、ミシン事業に注力するようになりました。1989年にはミシン部門をトロントの企業に売却しました。

現状

現在、シンガーは電子式ミシンなどの民生品を製造しています。2004年には投資会社によって買収され、2006年に他のミシン製造企業と合併しSVP Worldwideを設立しました。現在ではSVP Worldwideの一部となっており、同社傘下には他にPfaffやHusqvarna Vikingといったブランドも含まれています。競合企業としては、ブラザー工業、アイシン、Necchi、E&R Classic Sewing Machinesなどが挙げられます。

本社ビルなど

シンガーは、かつて世界一高いビルであったシンガービルを所有していました。また、スコットランドのクライドバンクにある工場には、当時世界一大きな時計がありました。これらの建物は既に解体されていますが、クライドバンクの工場のために作られた駅は現存しています。また、ロシアのサンクトペテルブルクにあるシンガーハウスは、アール・ヌーヴォー様式の美しい建築として、ロシアの文化遺産となっています。

関連項目

• - ミシン
• - 日本製鋼所 - ミシン事業で業務提携し、シンガー日鋼を設立（2000年解散）
• - 三菱電機 - 同系列の複数社と協業して三菱プレシジョンを設立
• - ハッピージャパン - シンガーミシンの日本における製造・販売元

脚注・出典

シンガー公式サイト(英語)
シンガーミシン公式サイト
Singer Corporation Worldwide
Singer Memories
Singer's Role in WWII
Sewing Machines, Historical Trade Literature Smithsonian Institution Libraries

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