シヴェルシクの戦い

シヴェルシクの戦い：東部戦線の激戦地

2022年7月3日、ウクライナ東部、ドネツィク州のシヴェルシクで始まった戦闘は、ロシア軍によるウクライナ侵攻の主要な局面であるドンバスの戦いの一部を構成します。この戦いは、ルハーンシク州の制圧を終えたロシア軍が、次の目標としてドネツィク州の重要都市シヴェルシクを攻略しようとしたことから始まりました。

戦闘の背景

2022年6月25日、ロシア軍はルハーンシク州の主要都市セヴェロドネツィクを含む複数の都市を占領し、同州における支配を固めました。この結果、多くの市民が避難を余儀なくされ、戦前の10%程度にあたる約1万人が市内に留まる状況となりました。ウクライナ国防省は、ソーシャルメディアを通じて軍事情報を拡散する市民に対し、作戦行動を妨害していると警告を発しました。

7月2日、リシチャンシクの戦いがロシア軍の勝利で終結し、翌日にはルハーンシク人民共和国（LPR）がルハーンシク州全域の支配を宣言しました。ガーディアン紙は、ロシア軍がルハーンシク州制圧後、隣接するドネツィク州へ侵攻し、スラヴャンスクやバフムートを攻撃するだろうと報じました。ウクライナ大統領府顧問も、リシチャンシクがロシア軍に占領される可能性を認め、ルハーンシク州知事は、ロシア軍が凄惨な戦術で攻撃を続けていると非難しました。外部の専門家は、ロシア軍がドンバス全域の占領を目標としており、リシチャンシクの陥落はルハーンシク州全域の制圧を意味すると分析しました。

ウクライナ軍はリシチャンシクからの撤退を認めましたが、ゼレンスキー大統領は「リシチャンシクが占領されたとは言えない。戦闘は郊外で続いている」と述べ、完全支配を否定しました。しかし、その後、大統領はリシチャンシクの陥落を認め、「現代兵器の供給が増えたおかげで」奪還を誓いました。

戦闘の経過

7月3日、LPRの外務省がシヴェルシクを巡る戦闘の開始を発表しましたが、ウクライナと西側の観測筋はこれを否定しました。リシチャンシクの戦いの過程で、ロシア軍はシヴェルシク方面へ3方向から攻勢を仕掛けました。シヴェルシクはドネツィク州北部に位置し、リシチャンシクの西約30kmの地点にあり、ドネツク人民共和国（DPR）が領有権を主張していました。同日、ロシア軍とLNR軍はビロホリウカを占領し、ルハーンシク州とドネツィク州の境界に到達しました。

7月4日、ロシア軍はシヴェルシクへの攻勢を続け、7月6日にはシヴェルシク周辺のスピルネ、ヴェルフニョカミアンスケ、フリホリウカ、ビロホリウカで戦闘が激化しました。7月9日、ロシア軍と分離主義勢力はフリホリウカを占領したと発表し、英国国防省も7月12日にこれを認めました。7月11日、ロシア軍はシヴェルシクから数キロメートルの地点にまで接近し、7月12日にはシヴェルシク東部への攻撃を開始しました。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍がスピルネとイヴァノ＝ダリウカへの攻撃に失敗し、甚大な損害を出したと発表しました。

7月13日、ロシアのタス通信はDPR首長のデニス・プシーリンの発言を引用し、DPRがシヴェルシクを占領したと報じました。しかし、分離主義勢力の元司令官イーゴリ・ギルキンは、市街地での戦闘は行われず、ウクライナ軍が撤退した後、ロシア軍が進駐しただけだと述べました。LPR内務大臣の補佐官ヴィタリー・キセリョフは、ロシア軍とLPR軍がシヴェルシクを占領したとするロシア人ジャーナリストの主張を裏付けましたが、ウクライナ統合軍作戦による映像からは、7月14日時点でロシア軍がシヴェルシクを占領している事実は確認されず、ロシア側の主張と矛盾しました。ウクライナ軍参謀本部は7月15日、ロシア軍がヴェルフニョカミアンスケを攻撃し空爆を行ったものの、ウクライナ軍の反撃によって撃退されたと発表しました。さらに、ロシア軍がスピルネの占領にも失敗したと発表しました。

7月16日、ロシア国防省は、7月4日から続いていた作戦の一時停止を解除し、ロシア軍はシヴェルシク方面への攻勢を継続しました。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍がイヴァノ＝ダリウカとフリホリウカで戦術的地位を向上させようとしたが失敗したと発表しました。また、ロシア軍はシヴェルシク占領作戦に向けた環境を整えるため、周辺地域のヴェルフニョカミアンスケ、ズワニウカに砲撃を加えました。7月17日には、イヴァノ＝ダリウカ、ビロホリウカ、ベレストヴェで戦闘が行われたことが両陣営から報告されました。ロシア軍は、シヴェルシク近郊で空中偵察を実施しました。7月18日、分離主義勢力は、シヴェルシクを占領したと発表しました。

しかし、7月19日現在でも、シヴェルシクはウクライナ軍の支配下にあり、占領されたという事実は確認されませんでした。2023年3月1日時点では、ロシア軍はシヴェルシクに接近できておらず、シヴェルシクの東約16kmにあるルハーンシク州ビロホリウカで防衛戦が行われています。

結論

シヴェルシクの戦いは、ドンバス地方におけるロシア軍の攻勢の一環であり、都市の支配権を巡り激しい戦闘が繰り広げられました。ロシア軍はシヴェルシクを占領しようとしましたが、ウクライナ軍の抵抗により、現在も都市はウクライナ軍の支配下にあります。この戦いは、ウクライナ侵攻における重要な局面の一つであり、今後の戦況が注目されます。

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