シースパロー (ミサイル)

RIM-7 シースパロー：艦艇を守る海の守護者

RIM-7 シースパローは、空対空ミサイルとして名高いスパローミサイルを基に開発された、艦艇の防衛システムです。ジェット機の進歩によって艦隊の防空が脅かされるようになった1940年代後半以降、近距離防空手段の必要性が高まりました。既存の速射砲だけでは不十分だったため、アメリカ海軍は新たな艦対空ミサイルシステムの開発を推進しました。

当初は、アメリカ陸軍が開発していた短射程地対空ミサイルXMIM-46 モーラーの海軍版であるシーモーラーを個艦防空システム（BPDMS）として採用予定でしたが、開発の遅延により、暫定的な代替手段としてスパローミサイルを艦載化することが決定されました。これがシースパローの誕生です。

BPDMS (Basic Point Defense Missile System)：緊急の解決策

BPDMSは、シーモーラーの遅延を補うための緊急措置として開発されたため、やや応急的なシステムでした。アスロック用の発射機を流用し、AIM-7E スパローミサイルをそのまま艦載ミサイルとして使用。イルミネーターもF-4戦闘機の火器管制システムを簡略化したものでした。

1967年、ガーシア級フリゲート「ブラッドレイ」での試験を経て、1971年から1975年にかけて、ノックス級護衛駆逐艦など多数の艦艇に搭載されました。アメリカ海軍の護衛艦が艦対空ミサイルを搭載したのはこれが初めてでした。しかし、あくまでも暫定的なシステムであり、ノックス級の一部艦艇では後にCIWSに換装されています。

IBPDMS (Improved BPDMS) / NSSMS (NATO Sea Sparrow Missile System)：国際協力による進化

BPDMSの限界が明らかになったことから、デンマーク、イタリア、ノルウェーは改良型システムの採用を決定。NATO諸国もこの動きに参加し、NATOシー・スパロー・プロジェクト・オフィス（NSPO）が設立されました。

1973年には、改良型BPDMS（IBPDMS）がNATOシー・スパロー・ミサイル・システム（NSSMS）Mk.57として制式化されました。IBPDMSでは、ミサイルの前翼を折り畳み式とすることでキャニスターを小型化し、発射機も改良されました。

ミサイル自体の改良も進み、RIM-7H、RIM-7H-5、RIM-7F、RIM-7M、RIM-7Pと順次アップデートされました。誘導システムの軽量化、ロケットモーターの改良、弾頭の強化など、性能向上が図られています。さらに、垂直発射システム（VLS）への対応も実現しました。

イルミネーターも自動化されたMk.95が開発され、後にMk.91ミサイル射撃指揮装置（GMFCS）へと発展。TAS Mk.23の導入により、目標捕捉能力と敵味方識別能力が向上しました。

ESSM (Evolved Sea Sparrow Missile)：現代の艦艇防衛システム

RIM-7Pの後継として、抜本的な設計変更が施されたESSMが開発されました。ESSMは、従来のシースパローの性能を大幅に向上させ、僚艦防空・近接防御にも対応できるようになりました。これは、個艦防空システムの枠を超えた、より高度な艦艇防衛システムへの進化を意味します。

採用国と登場作品

RIM-7 シースパローは、アメリカ海軍を始め、NATO諸国、海上自衛隊、韓国海軍など多くの国で採用されています。また、小説、アニメ、ゲームなど、様々な作品にも登場しており、その高い知名度と現実世界における重要な役割を示しています。

まとめ

RIM-7 シースパローは、その誕生から改良、発展まで、艦艇防衛システムの進化を象徴するミサイルです。緊急の必要性から生まれたシステムが、国際協力と技術革新によって、現代の高度な艦艇防衛システムへと発展していった歴史は、軍事技術史において重要な一例と言えるでしょう。

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