シーズ・ア・ウーマン

シーズ・ア・ウーマン：ビートルズの隠れた名曲

1964年、ビートルズはアルバム『ビートルズ・フォー・セール』のレコーディング中に、後に大ヒットとなるシングル『アイ・フィール・ファイン』のB面曲として「シーズ・ア・ウーマン」を制作しました。この曲は、主にポール・マッカートニーによって書かれ、レノン＝マッカートニー名義で発表されました。

制作秘話と音楽性

マッカートニーは、リトル・リチャードに影響を受けたブルージーな楽曲を目指し、レコーディング当日にスタジオで曲の大部分を完成させました。レノンも歌詞制作に若干関与したとされています。楽曲はAメジャーを基調とした4分の4拍子で、シンプルなコード進行ながら、ブルース、カントリー、フォークの要素も感じさせる奥深い楽曲に仕上がっています。特に、レノンがオフビートで演奏したリズムギターと、マッカートニーのレガートを用いたベースラインは、楽曲の重要な構成要素となっています。ベースラインは、他の楽器が際立つよう支える役割を果たしており、この楽曲の独特な雰囲気を作り出しています。

歌詞は三人称で書かれており、恋人同士の微妙な関係性が描かれています。特筆すべきは、ビートルズ楽曲で初めて麻薬に言及している点です。「Turn me on」というフレーズはマリファナを指しており、1964年の北米ツアーでボブ・ディランとマリファナを経験したことが歌詞に反映されていると考えられています。この大胆な歌詞も、この楽曲の魅力の一つと言えるでしょう。

レコーディング

レコーディングはEMIレコーディング・スタジオで行われ、ジョージ・マーティンがプロデュースを務めました。複数のテイクが録音され、テイク6が最終版として選ばれました。オーバーダビングでは、リンゴ・スターのパーカッション、マッカートニーのピアノ、ハリスンのギターソロなどが加えられ、楽曲にさらに深みが増しました。

モノラルミックスとステレオミックスが作成され、イギリスとアメリカでそれぞれ異なるバージョンがリリースされました。特にアメリカ盤は、キャピトル・レコードの意向でエコーが追加され、ピアノのパートが若干かき消されている点が異なります。

リリースと評価

「シーズ・ア・ウーマン」はB面曲ながら、Billboard Hot 100で最高位4位を記録するなど、高い人気を博しました。批評家からも、マッカートニーのボーカルやバンドの演奏は高く評価されていますが、歌詞については賛否両論があるようです。

この曲はその後、『レアリティーズ』『パスト・マスターズ Vol.1』『モノ・マスターズ』などのコンピレーションアルバムにも収録され、現在でも聴くことができます。

ライブ演奏とカバー

ビートルズは1965年と1966年のツアーでこの曲を演奏しており、ハリウッド・ボウル公演や日本武道館公演のライブ音源も残されています。マッカートニーもソロ活動でこの曲を演奏しており、アコースティックアレンジバージョンも存在します。

また、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ、ジェフ・ベック、スクリッティ・ポリッティなど、多くのアーティストによってカバーされています。特に、ジェフ・ベックによるカバーは、ジョージ・マーティンがプロデュースし、レゲエ調のアレンジが施された独特のバージョンとなっています。

まとめ

「シーズ・ア・ウーマン」は、シンプルな構成でありながら、ビートルズの卓越した演奏力と、時代を反映した大胆な歌詞によって、多くのリスナーを魅了し続ける名曲です。B面曲という枠を超え、ビートルズの歴史に刻まれた重要な楽曲の一つと言えるでしょう。

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