シーダート (ミサイル)

シーダート（Sea Dart）

シーダートは、イギリス海軍の艦隊防空を目的としたミサイルシステムであり、正式にはGWS.30と呼ばれています。このシステムは、対艦攻撃や航空機からの脅威に対処するために設計されており、20世紀の後半から現在に至るまで多くの改良が施されています。特に、フォークランド紛争や湾岸戦争での運用実績から、その性能が試されてきました。

来歴

シーダートの開発は1940年代後半から始まりました。第二次世界大戦の末期、イギリス海軍はフリゲート用の誘導ミサイルの開発に着手し、対艦ミサイルによる脅威に対抗する必要性が高まっていました。当初は「ポップシー」という名称で開発が進められましたが、国内での開発の見通しが立たず、アメリカとの共同開発へと向かうことになります。その中で、1954年にシーダートの前身となる「オレンジネル」という計画が始まり、1958年にはシーダートとして正式に進行し、1967年から生産が開始されました。

設計と機能

シーダートはセミアクティブ・レーダー・ホーミング（SARH）方式を採用しており、特に低高度での運用においても効果的な性能を発揮します。このミサイルは、空気吸引型ラムジェットエンジンを搭載しており、発射時には固体燃料のブースターが使用されます。技術的には、ポリロッド・アンテナを利用した独特な設計がなされています。

発射機は連装式で、最大40発の弾薬を収納することが可能です。ただし、フォークランド紛争では、防火ドアの不具合があったことが報告されており、後に改修されました。シーダートは対艦攻撃能力も備えており、特に42型駆逐艦では意図的に対艦ミサイルを搭載しない選択がされました。

バリエーション

シーダートにはいくつかのバリエーションがあります。

• - Mod 0: 初期バージョン。フォークランド紛争で実戦投入され、真空管を使用した電気回路が特徴。射程は74km。
• - Mod 1: フォークランド紛争の経験を元に改良されたバージョン。1983年から1986年にかけて実施され、シースキマーへの対処能力が向上。
• - Mod 2: 1989年から1991年の間に改良され、自動操縦の導入や射程を150kmに拡大。
• - Mod 3: 最後の改修版で、赤外線信管が追加され、2002年に就役。

運用実績

シーダートはフォークランド紛争で初めて実戦を経験しました。ここでは7機の敵機を撃墜する成果を上げましたが、アルゼンチン軍の低空侵入能力により、すべての脅威に対処できたわけではありません。湾岸戦争では、改良を受けたシーダートがイラク軍の対艦ミサイルを成功裏に撃墜するなど、その有効性を証明しました。

退役と後継

長年にわたって運用されてきたシーダートは、42型駆逐艦の老朽化に伴い、次第に退役していきました。後にはPAAMS（Principal Anti-Air Missile System）へと移行し、シーダートの役割を引き継ぎました。これにより、イギリス海軍の近代的な艦隊防空能力が強化されることとなりました。

搭載艦

シーダートは以下の艦艇に搭載されました。

• - 82型駆逐艦「ブリストル」
• - 42型駆逐艦
• - インヴィンシブル級航空母艦
• - アルゼンチン海軍のエルクレス級駆逐艦

シーダートは、歴史上の艦隊防空システムの中でも特徴的かつ重要な技術であり、その開発から運用まで、多くの変遷を経て現在に至っています。

もう一度検索