42型駆逐艦

42型駆逐艦：イギリス海軍の防空を担ったミサイル駆逐艦

42型駆逐艦、通称シェフィールド級は、イギリス海軍が運用したミサイル駆逐艦の艦級です。その設計は1960年代に遡り、度重なる変遷を経て、バッチ1からバッチ3まで、いくつかの派生型が存在します。特にバッチ3はマンチェスター級として区別されることもあります。

開発の経緯

1960年代初頭、イギリス海軍は混成護衛隊作業部会で、シーダート艦対空ミサイルを搭載した駆逐艦の必要性を議論しました。当初は17型フリゲートを基に開発が進められましたが、その後、設計は大型化し、4,500トン級となりました。しかし、1964年の報告書ではこの案は見送られ、大型嚮導駆逐艦や新型護衛艦との混成運用が提唱されました。

1966年、CVA-01級航空母艦の計画中止により、海軍は兵力整備コンセプトを抜本的に見直すことになりました。その結果、大型駆逐艦の代わりに小型ミサイル駆逐艦の建造が決定され、17型フリゲートの防空型派生案が再検討されました。これにより、909型レーダーを減らすなど、コスト削減が図られ、最終的にガスタービンエンジンを搭載する設計が採用されました。1970年には1番艦の建造が開始され、アルゼンチン海軍も同型艦を採用しました。

設計の特徴

船体は全通甲板型の遮浪甲板型で、全通縦肋骨構造を採用しています。スペースと重量を削減するため、艤装は簡素化されました。主錨は右舷に1つのみ、舷梯も両舷兼用で1組のみとされました。また、厨房も1つしか備えられていません。これらの設計は、船体長の切り詰めにつながりましたが、速力の低下や凌波性の低下という問題も生じさせました。特に船首部分は、青波が打ち上げられる状況となり、電子装備の配置にも悪影響を与えました。

これらの問題を改善するため、1975年から再設計が開始され、バッチ3では大型化されました。ただし、この設計変更によって船体強度の不足が生じたため、後に補強材を取り付ける改修が行われました。上部構造物はアルミニウム合金製という説もありますが、実際には船体・上部構造物ともに全鋼製でした。ただし、船体内の隔壁などはアルミニウム合金であり、火災の延焼を早める結果となりました。

機関

機関には、巡航用と高速用の2種類のガスタービンエンジンを用いたCOGOG方式を採用しています。巡航機にはロールス・ロイス タイン、高速機にはオリンパスが用いられました。機関の配置は、21型フリゲートと同様のパラレル配置です。電源としては、ディーゼル発電機が4セット搭載されましたが、非常発電機が省かれたため、冗長性が低下しました。

搭載装備

C4ISR

戦術情報処理装置としてADAWSを搭載し、後にADAWS-7に更新されました。戦術データ・リンクは、当初はリンク 10のみでしたが、後にリンク 11、そしてリンク 16にも対応しました。レーダーは、長距離対空捜索用の965P型、対空・対水上捜索用の992Q型、対水上捜索・航海用の1006型を装備していました。ソナーは、当初は184M/P型でしたが、後に2016型、更に2050型へと換装されました。電波探知装置（ESM）としては、UAA-1が搭載されましたが、開発遅延により初期建造艦では後日装備となりました。

武器システム

主兵装はシーダート艦隊防空ミサイルシステムです。連装発射機1基と射撃指揮用の909型レーダーを搭載しました。ミサイルの弾庫容量はバッチ1・2では20発でしたが、バッチ3では40発に戻されました。対潜兵器はリンクス哨戒ヘリコプターに依存しており、短魚雷発射管を搭載していましたが、後に撤去されました。艦砲としては、55口径114mm単装砲を装備し、砲射撃指揮装置を兼用しました。フォークランド紛争の戦訓から、近接防空用として、30mm連装機銃、20mm単装機銃、ファランクスCIWSが追加装備されました。電波妨害装置（ECM）も搭載されていましたが、2000年までに撤去されました。

運用史

42型駆逐艦は、14隻が建造され、21型フリゲートや22型フリゲートとともに、イギリス海軍の主力となりました。アルゼンチン海軍向けにも2隻が建造されました。フォークランド紛争では、シーダートによって7機の撃墜を記録しましたが、低空侵入能力に優れたアルゼンチン軍航空隊の攻撃により、2隻が戦没しました。その後、シーダートの性能向上も行われ、湾岸戦争では対艦ミサイルの撃墜にも成功しました。

まとめ

42型駆逐艦は、イギリス海軍の防空を担った重要な艦級でした。フォークランド紛争での活躍と教訓を通して、その設計思想や運用上の課題が明らかになりました。後継の45型駆逐艦の登場により退役が進められましたが、その歴史はイギリス海軍史に深く刻まれています。

もう一度検索