シー・ホーク
『シー・ホーク』（The Sea Hawk）は、1940年に公開されたアメリカ映画で、ラファエル・サバチニが1915年に発表した小説「海の鷹」を原作としています。この作品は、1924年にも映画化されていますが、本作は当時人気絶頂だった活劇スター、エロール・フリンを主演に迎え、彼の過去のヒット作の要素を取り入れつつ、よりスペクタクルな海洋冒険活劇として再映画化されました。
フリンの相手役には、彼と数々の作品で共演していたオリヴィア・デ・ハヴィランドが有力候補でしたが、彼女は当時、自身のイメージチェンジを望んでおり、本作への出演は見送られました。彼女は同時期に公開された『風と共に去りぬ』で、それまでのイメージを覆す重厚な演技を披露し、新境地を開拓しました。
映画の終盤では、イングランドがスペインへの抵抗を決意し、「イングランド万歳」「女王万歳」の歓声が沸き起こるシーンがあります。このシーンは、映画公開当時の社会情勢を色濃く反映しています。第二次世界大戦が勃発し、スペインは中立を保ちながらも枢軸国側を支援しており、イギリスはナチス・ドイツのフランス侵攻により苦戦を強いられていました。映画公開直後には、バトル・オブ・ブリテンが始まるなど、緊迫した情勢下で制作された作品であることが伺えます。
舞台は1585年のスペイン。国王フェリペ2世は、世界征服を目論んでいましたが、その大きな障壁となっていたのは、私掠船（海賊）を黙認するイングランドでした。フェリペ2世は、ドン・アルバレスを駐英大使として送り込むという計略を立てます。
スペイン王家の紋章を掲げたガレー船には、ドン・アルバレスとその姪のマリアが乗船していました。そこへ、イングランド旗を掲げた海賊船アルバトロス号が現れます。船長のジェフリー・ソープ率いる海賊たちは、砲撃戦の末、ガレー船に乗り込み、あっという間に降伏させます。ジェフリーは、手際よく宝物を奪い、漕ぎ手の奴隷たちを解放し、沈みゆくスペイン船から全員をアルバトロス号へ移動させます。マリアは当初、ジェフリーを「泥棒」と非難しますが、後に自分の宝石が返却されているのを見て、彼に対する感情を改め始めます。
一方、イングランドでは、エリザベス1世女王が海軍の設置に強く反対していました。ドン・アルバレスは、マリアを伴って女王に謁見し、先日の略奪について苦情を申し立てます。女王は、私掠船の船長たちを招集します。そこに遅れて現れたジェフリーは、ガレー船にイングランド人奴隷がいたことを理由に、自身の行為の正当性を主張します。女王は、今後スペイン船を略奪した場合は絞首刑に処すと宣言し、外交問題を収束させたかに見えました。
しかしその後、女王は密かにジェフリーを私室に招き入れ、彼が捧げた財宝に満足を示します。ジェフリーは、艦隊の編成を進言しますが、女王は乗り気ではありません。そこでジェフリーは、新大陸からスペインへの輸送路を絶つ必要性を説明し、女王の宣言と矛盾しないように、陸上からパナマ地峡でスペイン側を襲撃することを提案します。女王は表立って支持はしませんでしたが、ジェフリーの身を案じました。
その帰り道、庭園でジェフリーとマリアは再会します。マリアは自分の態度を詫び、ジェフリーも彼女を「薔薇のレディ」と呼び、二人は惹かれ合います。一方、親スペイン派のウルフィンガム卿とドン・アルバレスは、海図職人からアルバトロス号の動向を探り、先手を打とうとします。そのことを知ったマリアは、急いでドーバーへ向かいますが、船は既に出航した後でした。
ジェフリー達はパナマでスペイン軍を襲撃しますが、反撃に遭い散り散りになります。辛くもアルバトロス号に戻ると、既にスペイン軍に制圧されており、ジェフリーは逮捕されてしまいます。過去の略奪行為を問われ、終身刑を宣告され、ガレー船の漕ぎ手として奴隷となるのです。
マリアは、愛するジェフリーを想いながら歌を歌いますが、ジェフリーが拘束されたという知らせを聞き、卒倒します。ドン・アルバレスは、女王の黙認を激しく非難し、「シー・ホーク」を拘束しなければ開戦すると通告します。女王は余裕のある態度を装いながらも、重臣たちと協議し、船長たちを逮捕させ、船を拘留します。
ジェフリーはコルドバのガレー船にいました。そこで彼は、新入りのイングランド人奴隷から、スペインが無敵艦隊（アルマダ）を編成し、出撃間近であることを知ります。ジェフリーは、看守から武器を奪って脱獄し、手下たちと共に船を乗っ取り、ドーバーへと帰還します。一方、ドン・アルバレスはドーバーからスペインへ戻り、マリアはイングランドに残る決意をしていました。馬車に乗るマリアの前に、ジェフリーが現れ、二人は愛を告白し合います。
ジェフリーは、スペイン側の追っ手をかわしながら王宮に忍び込み、女王の元を目指します。ウルフィンガム卿が立ちはだかりますが、激しい決闘の末、ジェフリーは裏切り者を倒します。マリアの助けで現れた女王に、機密書類を渡し、ウルフィンガム卿の裏切りとスペインの侵攻を公にします。
後日、ジェフリーはナイトに叙せられ、女王はスペインへの抗戦を呼びかける演説を行い、海軍の創設を高らかに宣言するのでした。
ジェフリー・ソープ - エロール・フリン（森川公也）
ドニャ・マリア - ブレンダ・マーシャル（沢田敏子）
ドン・ホセ・アルバレス・デ・コルドバ - クロード・レインズ（宮川洋一）
サー・ジョン・バーレソン - ドナルド・クリスプ
エリザベス1世 - フローラ・ロブソン
ウルフィンガム卿 - ヘンリー・ダニエル
剣戟映画
英西戦争 (1585年-1604年)
The Sea Hawk - American Film Institute Catalog
The Sea Hawk - IMDb
The Sea Hawk - TCM Movie Database
The Sea Hawk - オールムービー
フリンの相手役には、彼と数々の作品で共演していたオリヴィア・デ・ハヴィランドが有力候補でしたが、彼女は当時、自身のイメージチェンジを望んでおり、本作への出演は見送られました。彼女は同時期に公開された『風と共に去りぬ』で、それまでのイメージを覆す重厚な演技を披露し、新境地を開拓しました。
映画の終盤では、イングランドがスペインへの抵抗を決意し、「イングランド万歳」「女王万歳」の歓声が沸き起こるシーンがあります。このシーンは、映画公開当時の社会情勢を色濃く反映しています。第二次世界大戦が勃発し、スペインは中立を保ちながらも枢軸国側を支援しており、イギリスはナチス・ドイツのフランス侵攻により苦戦を強いられていました。映画公開直後には、バトル・オブ・ブリテンが始まるなど、緊迫した情勢下で制作された作品であることが伺えます。
あらすじ
舞台は1585年のスペイン。国王フェリペ2世は、世界征服を目論んでいましたが、その大きな障壁となっていたのは、私掠船（海賊）を黙認するイングランドでした。フェリペ2世は、ドン・アルバレスを駐英大使として送り込むという計略を立てます。
スペイン王家の紋章を掲げたガレー船には、ドン・アルバレスとその姪のマリアが乗船していました。そこへ、イングランド旗を掲げた海賊船アルバトロス号が現れます。船長のジェフリー・ソープ率いる海賊たちは、砲撃戦の末、ガレー船に乗り込み、あっという間に降伏させます。ジェフリーは、手際よく宝物を奪い、漕ぎ手の奴隷たちを解放し、沈みゆくスペイン船から全員をアルバトロス号へ移動させます。マリアは当初、ジェフリーを「泥棒」と非難しますが、後に自分の宝石が返却されているのを見て、彼に対する感情を改め始めます。
一方、イングランドでは、エリザベス1世女王が海軍の設置に強く反対していました。ドン・アルバレスは、マリアを伴って女王に謁見し、先日の略奪について苦情を申し立てます。女王は、私掠船の船長たちを招集します。そこに遅れて現れたジェフリーは、ガレー船にイングランド人奴隷がいたことを理由に、自身の行為の正当性を主張します。女王は、今後スペイン船を略奪した場合は絞首刑に処すと宣言し、外交問題を収束させたかに見えました。
しかしその後、女王は密かにジェフリーを私室に招き入れ、彼が捧げた財宝に満足を示します。ジェフリーは、艦隊の編成を進言しますが、女王は乗り気ではありません。そこでジェフリーは、新大陸からスペインへの輸送路を絶つ必要性を説明し、女王の宣言と矛盾しないように、陸上からパナマ地峡でスペイン側を襲撃することを提案します。女王は表立って支持はしませんでしたが、ジェフリーの身を案じました。
その帰り道、庭園でジェフリーとマリアは再会します。マリアは自分の態度を詫び、ジェフリーも彼女を「薔薇のレディ」と呼び、二人は惹かれ合います。一方、親スペイン派のウルフィンガム卿とドン・アルバレスは、海図職人からアルバトロス号の動向を探り、先手を打とうとします。そのことを知ったマリアは、急いでドーバーへ向かいますが、船は既に出航した後でした。
ジェフリー達はパナマでスペイン軍を襲撃しますが、反撃に遭い散り散りになります。辛くもアルバトロス号に戻ると、既にスペイン軍に制圧されており、ジェフリーは逮捕されてしまいます。過去の略奪行為を問われ、終身刑を宣告され、ガレー船の漕ぎ手として奴隷となるのです。
マリアは、愛するジェフリーを想いながら歌を歌いますが、ジェフリーが拘束されたという知らせを聞き、卒倒します。ドン・アルバレスは、女王の黙認を激しく非難し、「シー・ホーク」を拘束しなければ開戦すると通告します。女王は余裕のある態度を装いながらも、重臣たちと協議し、船長たちを逮捕させ、船を拘留します。
ジェフリーはコルドバのガレー船にいました。そこで彼は、新入りのイングランド人奴隷から、スペインが無敵艦隊（アルマダ）を編成し、出撃間近であることを知ります。ジェフリーは、看守から武器を奪って脱獄し、手下たちと共に船を乗っ取り、ドーバーへと帰還します。一方、ドン・アルバレスはドーバーからスペインへ戻り、マリアはイングランドに残る決意をしていました。馬車に乗るマリアの前に、ジェフリーが現れ、二人は愛を告白し合います。
ジェフリーは、スペイン側の追っ手をかわしながら王宮に忍び込み、女王の元を目指します。ウルフィンガム卿が立ちはだかりますが、激しい決闘の末、ジェフリーは裏切り者を倒します。マリアの助けで現れた女王に、機密書類を渡し、ウルフィンガム卿の裏切りとスペインの侵攻を公にします。
後日、ジェフリーはナイトに叙せられ、女王はスペインへの抗戦を呼びかける演説を行い、海軍の創設を高らかに宣言するのでした。
キャスト
ジェフリー・ソープ - エロール・フリン（森川公也）
ドニャ・マリア - ブレンダ・マーシャル（沢田敏子）
ドン・ホセ・アルバレス・デ・コルドバ - クロード・レインズ（宮川洋一）
サー・ジョン・バーレソン - ドナルド・クリスプ
エリザベス1世 - フローラ・ロブソン
ウルフィンガム卿 - ヘンリー・ダニエル
関連項目
剣戟映画
英西戦争 (1585年-1604年)
出典
外部リンク
The Sea Hawk - American Film Institute Catalog
The Sea Hawk - IMDb
The Sea Hawk - TCM Movie Database
The Sea Hawk - オールムービー
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