ジェネシス (ジェネシスのアルバム)

ジェネシス（アルバム）



『ジェネシス』（Genesis）は、イギリスのロックバンド、ジェネシスが1983年に発表した通算12枚目のスタジオ録音アルバムです。バンドはこの作品と同名のタイトルを選び、その後の活動における重要な転換点を示す一枚となりました。

制作背景



前作であるライブアルバム『スリー・サイズ・ライヴ』（1982年）のリリース後、バンドメンバーはそれぞれソロ活動に精力的に取り組んでいました。特に、本作の制作に入るまでの期間には、ベーシスト兼ギタリストのマイク・ラザフォードがセカンドソロアルバム『眩惑のマクシーン』（1982年）を、ドラマー兼ボーカリストのフィル・コリンズもセカンドソロアルバム『フィル・コリンズ 2:心の扉』（1982年）を発表しています。さらに、キーボーディストのトニー・バンクスも1983年6月にはセカンドソロ作となる『ザ・フュージティヴ』をリリースしており、メンバー個々の音楽的探求が深まる中で本作は制作されました。

サウンド面では、前作『アバカブ』（1981年）からバンドのエンジニアを務めていたヒュー・パジャムが、本作よりプロデューサーとしても参加し、新たな音作りを追求しています。収録曲の中でも、先行シングルとして知られる「ママ」では、ドラムマシンやコード・シークエンスといった当時の最新技術が積極的に導入されました。また、「セカンド・ホーム・バイ・ザ・シー」や「シルヴァー・レインボウ」といった楽曲では、シモンズ社製のエレクトリック・ドラムが使用されており、彼らのサウンドパレットに新たな要素が加わったことを示しています。

反響と評価



本作は商業的にも大きな成功を収めました。特にイギリスでは、全英アルバムチャートでジェネシスにとって3度目となる首位を獲得し、51週間にわたってチャートに留まるロングセラーとなりました。ニュージーランドでも非常に息の長いヒットとなり、1983年11月11日付のアルバムチャートで初登場11位を記録した後、実に126週間にわたりトップ50にランクインし続けました。そして、リリースから3年以上経過した1987年2月から3月にかけて、合計4週間にわたり最高位である2位を記録するという異例の成功を見せています。アメリカのBillboard 200においても、ジェネシスにとって3作目となるトップ10入りを果たし、最高位は9位でした。

このアルバムからは複数の楽曲がシングルカットされ、ヒットを記録しました。「ママ」は全英で4位、全米では73位に達しました。彼らの代表曲の一つとなった「ザッツ・オール」は、全英16位、そして全米では自身最高位に迫る6位という成功を収めました。その他、「イリーガル・エイリアン」は全英46位、全米44位、「オール・トゥー・ハード（原題：Taking It All Too Hard）」は全米50位を記録するなど、多くの楽曲がシングルチャートにランクインしています。

音楽界からの評価も得ており、第27回グラミー賞においては、アルバム全体が最優秀ロック・ボーカル・パフォーマンス賞（デュオまたはグループ部門）にノミネートされました。さらに、インストゥルメンタル楽曲「セカンド・ホーム・バイ・ザ・シー」も、最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞にノミネートされています。

音楽評論家の視点としては、オールミュージックのStephen Thomas Erlewineが、このアルバムについて「すべてにおいて過剰である」と評し、ポップ、芸術性、ばかばかしさが入り混じり、「まとまりを見せていない」と指摘しつつも、その大部分の要素は「力強い」と評価しています。そして、本作がトリオ編成となったジェネシスの「自信とポップな力が増していったことの証明である」と位置づけています。この評価は、当時のジェネシスが追求していた多様な音楽性を反映していると言えるでしょう。

収録曲



全曲がフィル・コリンズ、マイク・ラザフォード、トニー・バンクスの3人による共作です。

1. 「ママ」 - "Mama" - 6:52
2. 「ザッツ・オール」 - "That's All" - 4:26
3. 「ホーム・バイ・ザ・シー」 - "Home by the Sea" - 5:07
4. 「セカンド・ホーム・バイ・ザ・シー」 - "Second Home by the Sea" - 6:07
5. 「イリーガル・エイリアン」 - "Illegal Alien" - 5:15
6. 「オール・トゥー・ハード」 - "Taking It All Too Hard" - 3:58
7. 「ジャスト・ア・ジョブ・トゥ・ドゥ」 - "Just a Job to Do" - 4:47
8. 「シルヴァー・レインボウ」 - "Silver Rainbow" - 4:30
9. 「イッツ・ゴナ・ゲット・ベター」 - "It's Gonna Get Better" - 5:14

参加ミュージシャン




このアルバムは、技術的な革新を取り入れつつ、彼らのキャリアにおける商業的なピークの一つを築いた作品として、ジェネシスの歴史において重要な位置を占めています。

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