ジェフ・アメン

ジェフ・アメン：多様な才能を持つロックベーシスト

ジェフ・アレン・アメン（Jeffrey Allen Ament）は、1963年3月10日生まれのアメリカ合衆国のミュージシャン、ソングライターです。彼は、ロックバンド「パール・ジャム」のベーシストとして最もよく知られていますが、それ以前にも「グリーン・リヴァー」や「マザー・ラヴ・ボーン」といったバンドで重要な役割を果たし、音楽業界に大きな足跡を残しています。

生い立ちと音楽への目覚め

アメンはモンタナ州の小さな都市ハヴァーで、5人兄弟の長男として生まれました。彼は幼少期を、人口700人にも満たない小さな町ビッグ・サンディで過ごし、厳格なカトリックの家庭で育ちました。アメン自身は、実家がとても貧しかったと語っています。10代の頃から、ラモーンズ、ザ・クラッシュ、ポリスなどのレコードに合わせてベースギターを弾き始め、音楽に没頭していきました。高校時代には、音楽だけでなく、バスケットボール、サッカー、陸上競技など、様々なスポーツにも取り組みました。高校卒業後、モンタナ大学に進学しますが、中退し、1983年に自身のバンド「ディランジド・ディクション」と共にシアトルへ移り住みます。シアトルでは、バンド活動の傍らカフェで働きながら音楽活動を続けました。

グリーン・リヴァー時代

シアトルで活動していたアメンは、マーク・アームやスティーヴ・ターナーといったミュージシャンと親交を深め、1984年にアームらが結成した「グリーン・リヴァー」に加入します。このバンドには、後にパール・ジャムで再びチームメイトとなるストーン・ゴッサードも参加していました。1985年5月、バンドはホームステッド・レコードからEP『Come on Down』でデビューを果たします。しかし、メンバー間の音楽的嗜好の違いからターナーが脱退し、代わりにディランジド・ディクションのバンドメイトだったブルース・フェアウェザーが加入しました。1987年7月には、サブ・ポップから初のリリースとなるEP『Dry as a Bone』を発表。1988年6月には唯一のフルアルバム『Rehab Doll』をリリースしますが、インディーズ志向のアームと、メジャー志向のアメン、ゴッサードの対立が表面化し、バンドは解散してしまいます。

マザー・ラヴ・ボーンでの成功と悲劇

グリーン・リヴァー解散後、アメンは新バンド「マザー・ラヴ・ボーン」に参加します。ここには、グリーン・リヴァーで一緒だったフェアウェザーとゴッサードも加入しました。フロントマンにはマルファンクションのヴォーカリスト、アンドリュー・ウッドを迎え、ドラマーはスキン・ヤードのグレッグ・ギルモアが務めました。バンドは結成後すぐにレコーディングとライブ活動を開始し、1989年初めにはポリグラムと契約を結びます。同年3月にはEP『Shine』でデビューを果たし、1990年3月には1stアルバムのリリースを予定していましたが、ウッドがヘロインのオーバードースにより急逝。バンドはそのまま解散し、ウッドの死後4ヶ月後に唯一のアルバム『アップル』がリリースされました。

テンプル・オブ・ザ・ドッグとパール・ジャム結成

ウッドの死後、アメンは一時的にヘヴィメタルバンド「ウォー・ベイビーズ」に参加しますが、ゴッサードと共に新たな道を模索し、幼馴染であるマイク・マクレディを誘い「テンプル・オブ・ザ・ドッグ」を結成します。このバンドは、アンドリュー・ウッドへの追悼として結成され、グリーン・リヴァー時代からの仲間であるジェフ・アメン、ウッドのルームメイトであったサウンドガーデンのクリス・コーネルが参加。その後、パール・ジャムのドラマーとなるマット・キャメロンも加わりました。バンドは、コーネルがウッドの生前に書いた楽曲や、ゴッサードとアメンが以前に作成したデモ曲のリハーサルを開始。オーディションを経てパール・ジャムのフロントマンとなるエディ・ヴェダーも、コーネルとのデュエットやバックコーラスで参加しました。1991年4月には、唯一のアルバム『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』をA&Mレコードよりリリースしました。

テンプル・オブ・ザ・ドッグの活動停止後、アメン、ゴッサード、マクレディは1990年に「パール・ジャム」を結成。後にテンプル・オブ・ザ・ドッグに参加したヴォーカリスト、ヴェダーも加入し、1991年にエピック・レコードと契約、デビューアルバム『ten』をリリースしました。パール・ジャムは1990年代初頭のグランジ・シーンにおいて高い評価を獲得し、現在も精力的に活動を続けています。

その他の活動

アメンはパール・ジャム以外にも、1994年に「スリー・フィッシュ」を結成し、1996年にセルフタイトルアルバムでデビュー。1999年には2ndアルバム『The Quiet Table』をリリースしましたが、同年に解散しました。2008年にはアルバム『Tone』でソロデビューを果たし、2011年には新バンド「Tres Mts」の結成をパール・ジャムの公式サイト上で発表、3月にアルバム『Three Mountains』をリリースしました。2012年には、また別の新バンド「RNDM」を結成するなど、多岐にわたる音楽活動を展開しています。

ジェフ・アメンは、その才能と音楽への情熱によって、ロックの歴史に名を刻んだミュージシャンの一人と言えるでしょう。

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