アンドリュー・ウッド

アンドリュー・パトリック・ウッド（1966年1月8日 - 1990年3月19日）は、アメリカ合衆国出身のシンガーソングライター、ミュージシャンであり、ロックシーンにおいてその名を刻みました。彼は、マルファンクションとマザー・ラヴ・ボーンという2つのバンドでボーカリストを務め、その独特な音楽性とカリスマ性で多くのファンを魅了しました。しかし、薬物依存に苦しみ、24歳という若さでこの世を去りました。

生い立ちと音楽への目覚め

ウッドは、ミシシッピ州コロンバスで3人兄弟の末っ子として生まれました。その後、ワシントン州のベインブリッジアイランドで育ち、幼少期から音楽に囲まれた環境で育ちました。両親の影響で音楽に興味を持ち、兄のケヴィンとブライアンと共に楽器に親しみました。特に、エルトン・ジョン、クイーン、エアロスミス、キッスといったアーティストに影響を受け、ロックミュージックへの情熱を育みました。

マルファンクションでの活動

1980年、14歳になったウッドは兄のケヴィンと共にマルファンクションを結成し、音楽活動を開始しました。初期のデモテープ制作を経て、ドラマーのリーガン・ヘイガーも加入し、バンドは本格的な活動を始めました。当時のシアトルでは珍しく、マルファンクションはグラムロックの影響を強く受けた衣装や音楽性で異彩を放っていました。しかし、1985年頃からウッドは薬物中毒に苦しみ始め、リハビリ施設に通うことになりました。その後もデモテープの制作やコンピレーションアルバムへの楽曲提供を行いましたが、フルアルバムをリリースすることはなく、1988年にバンドは解散しました。

マザー・ラヴ・ボーンでの飛躍と悲劇

マルファンクション解散後、ウッドは1988年に解散したグリーン・リヴァーのメンバーだったジェフ・アメン、ストーン・ゴッサードらとジャムセッションを開始しました。その後、同じくグリーン・リヴァーのメンバーだったブルース・フェアウェザー、元10ミニット・ウォーニング／スキン・ヤードのグレッグ・ギルモアも加わり、マザー・ラヴ・ボーンが結成されました。バンドはポリグラムと契約し、傘下のレーベルであるスタードッグから1989年3月にデビューEP『Shine』をリリースしました。アルバムへの期待が高まる中、レコーディングとライブ活動を続けましたが、ウッドは再びヘロイン中毒に苦しみ、リハビリ施設に入所することになりました。1989年の残りを施設で過ごし、1990年に施設を出所後、アルバムリリースに向けてライブ活動を再開しました。

突然の死

1990年3月16日、ウッドはヘロインのオーバードースにより昏睡状態に陥りました。ガールフレンドに発見され、病院で延命治療を受けるも、脳動脈瘤の破裂により脳死状態と診断されました。3日後の3月19日、延命装置が取り外され、24歳という若さでその生涯を閉じました。

死後の影響

ウッドの死後、3月にリリース予定だったマザー・ラヴ・ボーンの1stアルバム『アップル』は7月に延期され、リリースされました。アルバムは好意的なレビューに迎えられましたが、バンドは同年に解散を発表しました。アメンとゴッサードは、ウッドの友人でありルームメイトでもあったクリス・コーネルを誘い、ウッドへのトリビュートバンドであるテンプル・オブ・ザ・ドッグを結成しました。このバンドには、後にパール・ジャムを結成するマット・キャメロン、マイク・マクレディ、エディ・ヴェダーも参加し、1991年4月に唯一のアルバム『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』をリリースしました。また、1995年にはマルファンクションの音源を集めたフルアルバム『Return to Olympus』がリリースされ、ウッドの音楽は後世に受け継がれています。

アンドリュー・ウッドの短い生涯は、音楽への情熱と薬物依存の悲劇を象徴しています。彼の音楽は、今も多くの人々に愛され、その才能と情熱は永遠に語り継がれることでしょう。

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