ジェムデト・ナスル期

ジェムデト・ナスル期（Jemdet Nasr Period）

ジェムデト・ナスル期は、紀元前3100年から紀元前2900年頃のメソポタミア南部、現在のイラクにおける考古学的文化を指します。この期間は、特にテル・ジェムデト・ナスル遺跡に由来し、初めてこの時期に典型的な集落が発見されたことで名付けられました。この文化は原史時代に位置し、ウルク期からの発展を反映しています。

研究の歴史

ジェムデト・ナスルに関連する研究は、20世紀初頭から始まりました。1903年、ドイツの考古学者がシュルッパクで古風なシュメール語の楔形文字が刻まれた粘土板を購入し、その後1926年にはスティーヴン・ハーバート・ラングドンが正式にジェムデト・ナスルの発掘を開始しました。この成果により、独特な陶器や初期の楔形文字の数多くの粘土板が発見され、その重要性が広く認識されるようになりました。1930年には、バグダッドの会議でジェムデト・ナスル期が公式に区分されました。

年代決定と時代区分

初期の文献ではジェムデト・ナスル期を紀元前3200年から紀元前3000年に設定することが一般的でしたが、現在では放射性炭素年代測定により、紀元前3100年から紀元前2900年とされています。この時代は、ニネヴェ文化の初期やイランの原エラム時代と同時期にあたり、官僚機構や階層制度の発展が見られます。

文化的特徴

ジェムデト・ナスル期の文化的特徴として、色彩豊かな単色や多色の陶器が挙げられます。デザインには幾何学模様や象徴的な動物が含まれますが、これらは全体の一部に過ぎず、一部の特別な人々に関連づけられることが示唆されています。また、この時期は楔形文字の発展にも重要な段階であり、文字はピクトグラムからより抽象的なデザインへと変化し、特有の形を成しました。この文字が何語で書かれていたのかは不明ですが、おそらくシュメール語での記録があったと考えられています。

社会と経済

ジェムデト・ナスル期の社会は、中央集権的な構造を持ち、建造物や管理用の粘土板が発見されています。これにより、農業生産や食料配分など経済の中心にある運営機関の存在が示されています。この時代の経済は主に農業や牧畜に依存しており、自給自足型の生活が重視されていました。貴重な宝石や交易品は見つかっていませんが、陶器の一貫性は集落同士の交流と交易の盛況を示しています。

結論

ジェムデト・ナスル期の文化は、物質的および社会的な側面において独特な重要性を備えており、当時の人々の生活様式や経済、社会構造を理解する上で欠かせない時代です。考古学的発見はメソポタミアの歴史に新たな光を当て、研究者たちは引き続きこの時代についての解明を進めています。

もう一度検索