ジェリー・ウェスト

ジェリー・ウェスト：バスケットボール界のレジェンド

ジェリー・ウェスト（Jerome Alan West, 1938年5月28日 - 2024年6月12日）は、アメリカ合衆国ウェストバージニア州出身の元プロバスケットボール選手、指導者、そしてエグゼクティブです。彼の名前は、ロサンゼルス・レイカーズでの輝かしいキャリアと、現在のNBAロゴのモデルとして広く知られています。

少年時代と学生時代

ウェストは炭鉱で働く父のもと、慎ましい環境で育ちました。幼い頃からバスケットボールに情熱を注ぎ、自宅周辺で練習に励む日々を送りました。その熱心さのあまり、ビタミン剤の注射を受けるほどでした。

地元の高校では、当初は控え選手でしたが、最終学年の前に身長が10センチ以上伸び、チームの中心選手として頭角を現しました。彼は、州の高校バスケットボール史上初めて900点以上を記録し、チームを州大会優勝に導く原動力となりました。

60以上の大学から誘いを受けたウェストは、最終的に地元のウェストバージニア大学に進学しました。大学2年生からチームの正式な選手としてプレーし、平均17.8得点11.1リバウンドを記録。3年生になると26.6得点12.3リバウンド、4年生では29.3得点16.5リバウンドと、目覚ましい成長を遂げ、全米から注目される選手となりました。3年生の時には、チームをNCAA男子バスケットボールトーナメント決勝に導きましたが、惜しくも1点差で敗れました。しかし、準決勝以上での傑出した活躍が評価され、大会最優秀選手に選出されました。

大学でのプレーを終えた1960年の夏には、ローマオリンピックに出場し、金メダルを獲得しました。この時の代表チームには、オスカー・ロバートソンも名を連ねていました。

プロのキャリア

1960年のNBAドラフトで、ウェストはオスカー・ロバートソンに次ぐ全体2位でミネアポリス・レイカーズに指名されました。その後、レイカーズはロサンゼルスに移転し、ロサンゼルス・レイカーズとして新たなスタートを切りました。

1年目のシーズンから、ウェストは平均17.6得点、4.2アシスト、7.7リバウンドという素晴らしい成績を残しました。レイカーズは36勝48敗と負け越しましたが、プレーオフでは地区決勝まで進出し、当時の強豪セントルイス・ホークスに3勝4敗で敗れました。この年の新人王は、ロバートソンが獲得しました。

翌シーズン、ウェストは平均30.8得点（リーグ5位）、5.4アシスト（リーグ6位）、7.9リバウンドとさらに成長し、オールNBAファーストチームに初めて選出されました。その後、引退するまで10回もこの賞を受賞することになります。1962年1月17日には、1試合で63得点を記録しました。

レイカーズはプレーオフを勝ち進み、1962年のNBAファイナルに進出しましたが、ボストン・セルティックスに敗れました。その後も、レイカーズはファイナルでセルティックスと何度も対戦し、その度に敗れるという苦い経験を繰り返しました。ウェストは、チームを優勝に導けないスター選手として苦悩の時代を過ごしました。

ウェスト個人の活躍は目覚ましく、1965年には平均31得点でリーグ2位、1970年には31.2得点でリーグ首位を獲得するなど、常に高いレベルで得点を重ねました。チームも1962年、1963年、1965年、1966年、1968年、1969年、1970年と、何度もNBAファイナルに進出しました。しかし、1969年までは全てセルティックスに、1970年にはニューヨーク・ニックスに敗れ、優勝を逃しました。1962年のNBAファイナルは第7戦を3点差、1966年のNBAファイナルは同じく第7戦を2点差、1969年のNBAファイナルも第7戦を2点差で落とすという、息詰まる接戦でした。1969年の第7戦では、ウェストは42得点・13リバウンド・12アシストという、ファイナル史上初の40得点以上でのトリプルダブルを達成しました。この記録は、2015年のNBAファイナルでレブロン・ジェームズが記録するまで唯一のものでした。

1970年のNBAファイナル第3戦でウェストが放ったシュートは、伝説として語り継がれています。試合終了間際にコート中央から放ったシュートがブザーと同時に決まり同点となり、試合は延長戦に突入しました。しかし、レイカーズは結局この試合を2点差で落とし、最終の第7戦にも敗れ優勝を逃しました。

1971-72シーズン、30歳を超え、怪我も多かったウェストは引退も考えましたが、このシーズンのレイカーズは歴史的な躍進を遂げることになりました。リーグ新記録となる33連勝を達成し、シーズン成績は69勝13敗。ウェストの平均9.7アシストはリーグ首位となりました。1972年のNBAファイナルに進出したレイカーズは、ニューヨーク・ニックスを4勝1敗で破り、ウェストはついに初の優勝を経験しました。

その後、2シーズンを過ごしたウェストは、怪我で31試合の出場に留まった1973-74シーズンを最後に引退しました。

指導者とエグゼクティブのキャリア

引退後のウェストは、1976年から3シーズンにわたってレイカーズの監督を務めました。この間、145勝101敗で勝率58.9％を記録し、プレーオフを逃していたレイカーズを3年連続でプレーオフに導きました。初年度に地区決勝で敗れたのが最高の成績で、翌年は1回戦敗退、3年目は地区準決勝敗退でした。

1979年からはコンサルタントとしてレイカーズのフロント入りし、2年間を過ごしました。1982年には、ゼネラルマネージャーとして選手人事に関わる仕事を担当することになりました。当時のレイカーズは、カリーム・アブドゥル＝ジャバーやマジック・ジョンソンを擁し、前年度からパット・ライリー監督が就任した強豪チームでした。さらにジェームズ・ウォージーを加えたレイカーズは、1980年代に黄金時代を迎え、これらの選手を核にしてチームの補強に尽力しました。

1980年代の終わりにアブドゥル＝ジャバーが引退すると、ユーゴスラビア人のブラデ・ディバッツを獲得しました。ディバッツは、NBAで活躍した最も初期のヨーロッパ人選手の一人となりました。レイカーズは1990年代前半に低迷期に入りましたが、チームのバスケットボール部門取締役副社長に昇格した1994-95シーズンに、エディー・ジョーンズなどを獲得し、48勝34敗まで持ち直しました。この功績が認められ、ウェストはNBA最優秀役員賞を受賞しました。

1996年、ウェストはシャキール・オニールとコービー・ブライアントを獲得するという、歴史的な決断を下しました。2000年にフィル・ジャクソン監督を招聘すると、レイカーズは2000年のNBAファイナルに進出し、12年ぶりに優勝を果たし、そこから3連覇を達成しました。ウェストが選手人事の仕事に携わって以降、合計7回目の優勝となりました。

2002年、ウェストはレイカーズのフロントを退き、メンフィス・グリズリーズとバスケットボール部門社長として契約し、同チームへ移籍しました。グリズリーズはチーム創設以来成績が低迷していましたが、ヒュービー・ブラウンを監督に迎え入れ、このシーズンは過去最高の28勝54敗で終えました。翌シーズンには50勝32敗と躍進し、レイカーズ時代に続き2度目のNBA最優秀役員賞を受賞しました。2007年に辞任。

その後

2019年6月1日、ドナルド・トランプ大統領はウェストに大統領自由勲章を授与することを発表しました。

2024年6月12日に逝去。86歳でした。

ジェリー・ウェストは、その卓越した才能とリーダーシップで、バスケットボール界に多大な貢献をしました。彼の功績は、永遠に語り継がれるでしょう。

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