ジェームス・カーティス・ヘボン

ジェームス・カーティス・ヘボン（James Curtis Hepburn、1815年3月13日 - 1911年 9月21日）は、アメリカ合衆国出身の医師、医療伝道宣教師であり、幕末から明治初期の日本において、医療活動、聖書の日本語訳、和英辞典の編纂、教育活動など、多岐にわたる分野で大きな足跡を残しました。

生涯

前半生

1815年、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ミルトンで、スコットランド系の家系に生まれました。1832年にプリンストン大学を卒業後、ペンシルベニア大学で医学を学び、1836年に医学博士号を取得しました。1840年にクララ・メアリー・リートと結婚し、1841年には宣教師として海外へ派遣され、シンガポール、マカオ、廈門などを経て、1846年にアメリカへ帰国し、病院を開業しました。

日本での活動

1859年、ヘボンは長老派教会の宣教師として、妻クララと共に日本へ渡りました。横浜に到着後、成仏寺に住まいを定め、宗興寺に神奈川施療所を開設し、医療活動を開始しました。当時の日本は西洋医学が未発達であったため、ヘボンの医療活動は多くの人々に貢献し、横浜における近代医学の礎を築いたと言われています。

1860年には、大名行列に遭遇した際、ひざまずくことを拒否したエピソードが残っています。また、1862年の生麦事件では、負傷者の治療にあたりました。1863年には、男女共学のヘボン塾を開設し、教育活動にも力を入れました。この塾は、後に明治学院の基礎となります。

ヘボンは、岸田吟香の眼病を治療した縁から、和英辞典編纂を手伝ってもらうようになりました。1867年には、日本初の本格的な和英辞典である『和英語林集成』を出版。この辞典は、ヘボン式ローマ字を広める上で重要な役割を果たしました。1872年には、横浜で第一回在日宣教師会議を開催し、聖書の日本語訳にも着手しました。1880年頃には新約聖書の和訳を完成させました。

1887年には、ヘボン塾を基盤として明治学院を設立し、初代総理に就任しました。

晩年

1892年、妻の病気を理由に日本を離れ、アメリカに帰国しました。1905年には、日本文化への貢献が認められ、勲三等旭日章を受章しました。1911年、96歳でその生涯を閉じました。

ヘボンの業績

和英辞典

1867年に出版された『和英語林集成』は、日本初の本格的な和英辞典であり、ヘボン式ローマ字の普及に大きく貢献しました。この辞典は、その後も改訂を重ね、日本の英語教育、ひいては国際交流の発展に貢献しました。

ローマ字

『和英語林集成』で採用されたヘボン式ローマ字は、日本語をラテン文字で表記する際の標準的な方式として定着しました。現在でも、パスポートの氏名表記などに広く用いられています。

聖書翻訳

ヘボンは、聖書の日本語訳にも尽力しました。同僚の宣教師らと協力し、新約聖書全巻の翻訳を完成させ、キリスト教の普及に貢献しました。

医学

ヘボンは、横浜で医療活動を行う中で、近代医学の基礎を築きました。脳外科を専門としていましたが、当時多かった眼病の治療にも力を注ぎました。多くの患者を治療しただけでなく、弟子の育成にも力を入れ、日本の医学発展に貢献しました。

教育

ヘボンは、ヘボン塾を開設し、男女共学の教育を推進しました。この塾は、後の明治学院の母体となり、多くの優秀な人材を輩出しました。

名前と表記

ヘボンという姓は、スコットランドにルーツを持ち、「ヘプバーン」や「ヘップバーン」とも表記されることがありますが、日本では本人が「ヘボン」と名乗ったため、この表記が定着しました。ヘボンが創設に関わった学校や教会では、「ヘボン」表記を尊重しています。また、ジェームスの発音・表記も、時代とともに変化してきました。

ヘボンと日本語

ヘボンは、日本語学習にも熱心でした。日本への宣教に向かう航海中に日本語訳聖書などを利用し、来日後は積極的に日本語を学ぼうとしました。また、日本の歴史書も読んでいました。

ヘボンの影響

ヘボンの業績は、日本の近代化に大きく貢献しました。和英辞典の編纂、ヘボン式ローマ字の普及、聖書の翻訳、医療活動、教育活動など、多岐にわたる分野での功績は、現代の日本にも大きな影響を与え続けています。

ヘボンは、日本における西洋文化の普及に貢献しただけでなく、異文化間の相互理解を深める役割も果たしました。彼の功績は、日本とアメリカの友好関係の基礎を築く一助となったと言えるでしょう。

登場作品

ヘボンは、小説やドラマの登場人物としても描かれています。例えば、村上もとかの漫画『JIN-仁-』では、主人公と英語で会話する場面が描かれています。

刊行文献

ヘボンに関する多くの書籍が出版されており、彼の生涯や業績について詳しく知ることができます。

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