ジギトキシン

ジギトキシン（Digitoxin）

ジギトキシンは、強心配糖体という薬剤の一種で、心筋細胞の機能を高める作用を持っています。これは、細胞膜に存在するNa+/K+ATPaseという酵素を阻害することによって実現されます。その結果、心筋細胞内のカルシウムイオン濃度が増加し、心筋の収縮力が向上します。この効果は「陽性変力作用」として知られ、心不全や心房性不整脈を抱える患者に対して使用されることがあります。

しかし、ジギトキシンはネコに対しては一般的な治療オプションではなく、その使用はあまり推奨されません。さらに、この薬剤はカルシウム注射薬やスキサメトニウムとの併用が禁忌とされており、合併症のリスクが高いため注意が必要です。特に、ジギタリス中毒と呼ばれる重大な副作用が起こる可能性があり、この状態は強心配糖体に関連する症状として知られています。

歴史

ジギタリスを用いた医療の歴史は1775年にさかのぼりますが、それから長い間、ジギトキシンの活性成分は孤立されることはありませんでした。1875年にはオスヴァルト・シュミーデベルクによって、純粋なサンプルが初めて得られ、その後の研究に大きく寄与しました。

ジギトキシンの現代的な利用法は、フランスの薬理学者クロード＝アドルフ・ナティベユの業績に大きく依存しています。彼の研究により、ジギトキシンの治療的用途が広がりました。最初の分子構造の解析は1925年にアドルフ・ヴィンダウスによって行われましたが、完全な分子構造の解明は1962年まで待たなければなりませんでした。

このように、ジギトキシンはその特性から医療の多くの場面で利用されていますが、取り扱いには十分な注意が必要です。特にジギタリスに関連する薬剤の使用では、患者の状態に基づいた慎重な判断が求められます。薬剤の効果を最大化するためにも、使用にあたっての知識と適切な管理が欠かせません。さらに、アガサ・クリスティの小説においても、ジギタリスを用いた染みた殺人事件が描かれるなど、その効能は文学作品でも取り上げられることがあります。

参考文献

• - 獣医学大辞典編集委員会編集　『明解獣医学辞典』　チクサン出版社　1991年
• - Donald C. Plumb著　佐藤宏ほか監訳　『プラム 動物用医薬品ハンドブック 原書第3版』　株式会社ワハ　2003年
• - 伊藤勝昭ほか編集　『新獣医薬理学 第二版』 近代出版　2004年

関連項目

• - ジギタリス
• - ジゴキシン
• - ジギトキシゲニン

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