ジテルペン

ジテルペン：多様な構造と生理活性を持つテルペン

ジテルペンは、イソプレン単位が4つ結合した、化学式C20H32を持つテルペンの1種です。ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)を前駆体として生合成されます。ジテルペン骨格は、レチノール、レチナール、フィトールなど、生物学的に重要な様々な化合物の基礎構造となっています。ただし、レチノールとレチナールは、C40のカロテノイド（テトラテルペノイド）が2つに分解されて生成されるため、GGPPから直接合成されるわけではありません。

ジテルペンの生合成

ジテルペンの生合成経路は、ファルネシルピロリン酸（FPP）のプレニル化によってGGPPが生成されることから始まります。このGGPPが、様々な酵素反応を経て、多様な構造を持つジテルペノイドへと変換されていきます。この変換過程では、鎖状のGGPP骨格が環状構造へと変化する重要なステップがあり、例えばラブダン骨格は協奏的環化によって生成されます。

ジテルペノイドの多様性

ジテルペンは、その構造的多様性において非常に注目に値します。様々な植物や生物種において、多様なジテルペノイドが生成されており、これらはそれぞれ独自の構造と生理活性を持っています。代表的なジテルペノイドには以下のものがあります。

アビエチン酸: 樹脂成分として知られる。
アフィジコリン: 真菌由来の化合物。
カフェストール: コーヒー豆に含まれる。
センブレンA: 海産生物由来。
フェルギノール: 植物由来。
フォルスコリン: 薬理作用を持つ。
グアナカステペンA: 植物由来。
カーウェオール: カルダモンなどに含まれる。
ラブダン: 特定の植物に多く含まれる。
ラゴキリン: 植物由来。
スクラレン: スフィンゴ[[脂質]]の前駆体。
ステマレン: 植物由来。
ステビオール: 甘味成分。
タキサジエン: パクリタキセルの前駆体。抗がん剤の原料となる。
チアムリン: 植物由来。

これ以外にも、多くのジテルペノイドが知られており、それぞれが特有の構造と生物活性を持っています。例えば、
Dodonaea petiolaris は、ent-3β-acetoxy-15,16-epoxylabda-8(17),13(16),14-trien-18-oic acidとそのエナンチオマーを生成する。
Spirostachys africana は、下剤作用を持つexcoecarinを生成する。
Salvia divinorum は、向精神性作用を持つサルビノリンAを生成する。

ジテルペンの基本骨格

ジテルペノイドは、共通の基本骨格を有するものの、様々な置換基や官能基の導入、環化反応などによって、多様な構造を形成しています。代表的な基本骨格としては、フィタン、ラブダン、ハリマン、グナファラン、コレンサン、ent-クレロダン、アビエタン、イセテキサン、トタラン、ナギラクトン、ピマラン、ロサン、エリトロキシラン、パラグアラン、デバダラン、カッサン、クレイスタンタン、イソクレイスタンタン、イソコパラン、ポドアルパン類、カウラン、フィロクラダン、ギンコリド、ビロバリド、ベイエラン、ビラノバン、アチサン、トラキロバン、ヘルビフルバン、アコニタン、ヘテラチサン、アフィジコラン、ジベレラン、ジバン、ロイコトール、グラヤノトキサン、センブラン、バスマン、オイニセラン、アベスチナン、エスフェラン、ブリアナン、ドラベラン、ネオドラベラン、ドラスタン、シアタン、エスフェロアン、ベルコサン、ネオベルコサン、ホモベルコサン、ネオホモベルコサン、カスバン、ラチラン、ラムノフォラン、ダフナン、チグリアン、インゲナン、ジャトロファン、ジャトロフォラン、クロトフォラン、フシコカン、バルパラン、ムリナン、エスパタン、ベルチシラン、タキサン、トリネルビタン、ケンパン、アンフィレクタン、シクロアンフィレクタン、アドシアン、ネオアンフィレクタン、キセニカン、キセニアフィラン、ビシダン、エレマン、プレニルオイデスマン、プレニルゲルマクラン、プレニルシクロゲルマクラン、ロバン、パキジクチアン、プレニルアロマデンドラン、セルラタン、ビフロラン、デシピアン、サクラタン、オブツサン、エスフェノロバン、ソルダリシンなどが挙げられます。これらの基本骨格は、更なる修飾を受けて、より複雑な構造へと変化していきます。

ジテルペンとその誘導体は、植物の樹脂成分、抗菌物質、抗がん剤、医薬品など、様々な分野で重要な役割を果たしています。その多様な構造と生理活性は、今後の研究によって更に解明されていくでしょう。

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