カフェストール

カフェストールは、コーヒー豆に自然に含まれるジテルペン化合物です。特にアラビカ種のコーヒー豆には、重量あたり約0.6%のカフェストールが含まれていることが知られています。この化合物は、コーヒーの抽出方法によって含有量に大きな差が見られます。

最もカフェストールが多く抽出されるのは、フレンチプレスやトルココーヒーのように、ろ過をしない方法で淹れたコーヒーです。これらのコーヒーは、コーヒー豆の微細な粒子がそのまま抽出液に含まれるため、カフェストールも豊富に含まれます。一方、ペーパードリップなどのろ過を行う抽出方法では、カフェストールはほとんど除去され、抽出液に含まれる量はごくわずかになります。

カフェストールは、摂取量によって人体に様々な影響を与える可能性が研究されています。例えば、コーヒーを定期的に摂取することで、血清コレステロール値が上昇するとの研究結果があります。この影響は、男性で約8%、女性で約10%と報告されています。ただし、ろ過したコーヒーを飲む場合は、この影響は女性においてのみ有意に認められています。これは、ろ過によってカフェストールが除去されることが影響していると考えられます。

カフェストールの臨床的な重要性としては、動物実験において抗がん作用が示唆されています。ラットを用いた実験では、カフェストールが発がんを抑制する効果が認められています。また、カフェストールは、細胞内の核内受容体であるファルネソイドX受容体（FXR）やプレグナンX受容体（PXR）のアゴニスト（活性化剤）として作用することがわかっています。これらの受容体は、コレステロールの代謝や恒常性を調節する役割を担っており、カフェストールがこれらの受容体を活性化することで、コレステロールの代謝を妨害する可能性が考えられています。さらに、カフェストールには、パーキンソン病の進行を抑制する効果がある可能性も指摘されており、神経保護作用に関する研究も進められています。

カフェストールは、コーヒーという身近な飲料に含まれている化合物ですが、その摂取方法や量によって人体への影響が異なることが示唆されています。今後の研究によって、カフェストールのより詳細な生理活性や、健康への影響が明らかになることが期待されます。

関連項目

* カーウェオール

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