シデ

シデ（四手、椣）について

シデは、カバノキ科クマシデ属（学名：Carpinus）に属する落葉広葉樹の総称です。比較的小型の種が多く、樹高は最大でも20m程度。樹形は低い位置から幹が分岐し、しばしば株立ち状になります。樹皮は滑らかで灰色系のものが多いのが特徴です。

形態

枝: 左右にジグザグと伸びる仮軸分枝です。
葉: 枝に互生し、葉脈は羽状脈。縁には鋸歯があり、二重鋸歯となることもあります。
花: 雌雄同株で、雄花は枝から垂れ下がり、雌花は新しい枝の先端に付きます。花穂は稲穂に似た形をしており、雌花はホップのような形になります。苞は葉に似て鋸歯を持ち、種によって両側または片側に鋸歯があります。
果実: 堅果で果肉は持たず、翼はありませんが苞に包まれます。

生態

温帯の広葉樹林の主要な構成種で、湿潤肥沃な土地を好む種が多いですが、乾燥に強い種もいます。昆虫の食草としても知られています。

名前と分類

和名のシデは、神社の注連縄に垂らす四手（紙垂）に花穂が似ていることに由来すると言われています。牧野富太郎は、果穂が枝垂れる様子から名付けられた可能性を示唆しています。

属名の Carpinus は、ケルト語の「樹」と「くびき」に由来するとされ、材が牛の軛に使われたことが起源とされています。また、ラテン語の「二頭立ての馬車」に由来するという説もあります。英名では、Yoke tree（軛の木）やhornbeam（角のような木）と呼ばれます。

利用

景観: 街路樹や盆栽として利用されます。
木材: 硬く重いため、ほだ木、紡績木管、農具の柄、木工玩具などに使われます。ただし、狂いやすく乾燥に注意が必要です。耐朽性は低いため、枕木として使う場合は防腐処理が必要です。
食用: アゼルバイジャンなどでは、肉詰め料理ドルマの皮に葉が使われます。

世界のシデ

北半球の温帯に約30種が分布し、特に東アジアに多く、中国に集中しています。ヨーロッパには2種、北アメリカには1種のみが知られています。日本では、サワシバ、クマシデ、アカシデ、イヌシデ、イワシデの5種が見られます。

*セイヨウシデ (Carpinus betulus)
ヨーロッパに広く分布し、ナラやブナと混生します。
アメリカシデ (Carpinus caroliniana)
アメリカ東部に分布し、青みがかった灰色の幹からblue-beech（青いブナ）とも呼ばれます。
サワシバ (Carpinus cordata)
中国と日本（東日本）に分布し、心臓形の葉が特徴です。
クマシデ (Carpinus japonica)
日本固有種で、葉脈が多く、細長い印象を与えます。
アカシデ (Carpinus laxiflora)
中国、朝鮮半島、日本に分布し、若枝が無毛で、果実が果苞に抱かれます。
イヌシデ (Carpinus tschonoskii)
中国、朝鮮半島、日本に分布し、若枝に毛があります。果実はほぼ露出した形となります。
イワシデ (Carpinus turczaninovii)
中国、朝鮮半島、日本（西日本）に分布し、乾燥に強く岩場に生えます。

この他にも、Carpinus eximia, Carpinus fargesii, Carpinus hebestrom, Carpinus kawakamii, Carpinus orientalis, Carpinus putoensis, Carpinus rankanensisといった種が知られています。特に、Carpinus putoensisは中国固有種で、絶滅危惧種に指定されています。

シデは、その多様な種と生態、利用価値から、自然界と人間生活の両方において重要な存在です。

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