ドルマ

ドルマ：多様な文化に彩られた野菜の詰め物料理

ドルマは、米、挽肉、玉ねぎ、香味野菜などを、キャベツの葉やブドウの葉で包み込んだり、くり抜いたナス、パプリカ、ズッキーニ、カボチャなどに詰めて調理する料理です。中央アジアから北アフリカまで、広く分布しており、地域によって材料や調理法にバリエーションがあります。

その歴史は古く、サーサーン朝ペルシアの時代には、すでにブドウの葉で詰め物を包んだ料理が存在したという記録が残っています。中世のイスラム王朝では、「マハシー」（アラビア語で「詰められたもの」の意）と呼ばれ、ナスや瓜を使ったものが料理書に記されています。オスマン帝国時代には、肉のドルマに米が使われるようになりました。

トルコにおけるドルマ

トルコでは、肉の入らないブドウの葉のドルマを「ヤランジュ・ドルマス」（偽のドルマ）と呼ぶこともあります。また、米やナッツ類、挽肉などを塩漬けにしたブドウの葉やキャベツの葉で巻いたサルマという料理と類似していますが、厳密な区別はありません。ドルマには、卵黄とレモン汁のソース（テルビイェ）やヨーグルトとニンニクのソースを添えることが一般的です。さらに、ムール貝やサバ、鶏肉などを用いたドルマも存在します。

ギリシャにおけるドルマ

ギリシャでは、野菜の葉で包んだものをドルマ（ドルマダキ、ドルマデス）と呼び、くり抜いた野菜に詰め物をしたものはイェミスタと呼び分けています。トルコと同様に、レモン汁と卵黄のソース（アヴゴレモノ）を添えることが多いです。北部ギリシャでは、発酵させたキャベツの葉を用いたアルミアというドルマもあります。

アラブにおけるドルマ

アルジェリアとイラク以外のアラブ諸国では、ドルマは「マハシー」と呼ばれています。アルジェリアには、イワシの肉をつぶした団子の料理であるドルマ・サルディーヌが存在します。イラクでは、オスマン帝国時代以降、マハシーはドルマと呼ばれるようになり、現在ではたっぷりの汁で煮込んだものを指すようになりました。様々な野菜を組み合わせ、油で炒め、塩水で蒸し煮にするのが特徴です。ラム肉やソラマメを加えることもあります。地域によって、煮汁に酸味をつける材料が異なり、ヨーグルトを添えて食べることもあります。エジプトでは、ナス、ズッキーニ、トマト、ピーマンなどに詰め物をし、トマトジュースと水で蒸し煮にしたものをドルマと呼びます。

その他の地域

アゼルバイジャンでは、ポテトクロケに詰め物をしたドルマも存在します。

ロールキャベツとの関係

オスマン朝トルコのブドウの葉やキャベツのドルマがヨーロッパに伝わり、ロールキャベツへと発展したと考えられています。

ドルマは、その多様なバリエーションと歴史の深さから、単なる料理という枠を超えた、文化交流の証と言えるでしょう。肉入り、肉なし、野菜の種類、調理法、ソースなど、多様な組み合わせと奥深い歴史を持つドルマは、これからも人々を魅了し続けることでしょう。

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