ジビク・テムル

ジビク・テムルについて

ジビク・テムル（モンゴル語: J̌ibig temür、中国語: 只必帖木児）は、モンゴル帝国の皇族であり、オゴデイ・カアンの息子として誕生しました。彼の出自は、蒙古の名門に育った証として重要です。漢文の史料『元史』では只必帖木児（zhībìtiēmùér）、ペルシア語の『集史』ではجینك تیمور（jīnk tīmūr）と記されています。

生い立ちと家族

ジビク・テムルは、オゴデイの息子として、モンゲトゥやメルギデイといった兄弟を持っています。彼はスルドス部のチラウンの孫であるソグドゥの妻、ムクリのもとで育てられました。彼を支えたのはムクリの息子であるタングタイで、後にジビク・テムルの親衛隊として重要な役割を果たしました。

コデン家の当主へ

モンケ・カアンの治世末期、兄モンゲトゥの死去に伴い、ジビク・テムルはコデン家の新たな当主となりました。この頃、モンゴル帝国はクビライとアリクブケの間での帝位継承戦争に巻き込まれており、ジビク・テムル率いるコデン・ウルスもこの渦中にありました。最初は消極的な態度を見せていたものの、アリクブケ派の侵攻により、ジビク・テムルはクビライ支持へと舵を切ることになります。

戦況と戦功

ジビク・テムルがクビライ側を支持するようになった結果、彼の軍は河西方面での戦闘で大きな成果を上げました。1265年に河西での戦功として銀を授与されたことは、彼の重要性を示しています。その後、彼にはジャルグチ設置の命令が出され、永昌府という新都城が建設され、これはコデン・ウルスの本拠地となりました。

後の活動と影響

その後も、チベット方面への遠征やジャムチの管理についての訴えなど、多岐にわたる活動を行いました。しかし、1290年代に入ると、ジビク・テムルの記録はほとんど見られず、その動向は不明となります。彼が当主から失脚した可能性や、甥に指揮権を譲ったことが考えられています。

最後の年

1310年には貧困に陥ったジビク・テムルに対し、西涼府の田が与えられたとの記録がありますが、その後の詳細は不明であり、間もなく彼は亡くなったと推測されています。

人柄と評判

ジビク・テムルは、その行動や性格から「利己的な人物」とされ、他の王たちによる要請が断られる中で、彼は特に多くの要望をカアンに提出している点が注目されています。このことが彼の立場や考え方を物語っています。

子孫に関する疑問

ジビク・テムルの子孫については諸説あり、定かではありません。『元史』では彼の子・孫に関する詳細はなく、逆に『集史』では名前の知られていない息子たちが存在すると記されているものの、その真相は不明です。杉山正明の考えでは、ジビク・テムルの子孫として特定の人物が議論されているものの、証拠は乏しいのが現状です。

まとめ

ジビク・テムルの人生は、モンゴル帝国の歴史の中で重要な位置を占めています。彼の慣習や人柄、また彼の家族にまつわる謎は、歴史研究において興味深いテーマとなっています。モンゴル帝国における彼の影響力や彼が直面した政治的状況は、時代の変遷における人間ドラマの一端を示しています。

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