ジミー・ロジャーズ (ブルース・ギタリスト)

ジミー・ロジャーズ

ジミー・ロジャーズ（Jimmy Rogers、1924年6月3日 - 1997年12月19日）は、20世紀後半のシカゴ・ブルースシーンにおいて、ギタリスト、シンガー、ハーモニカ奏者として多大な足跡を残したアメリカ合衆国の音楽家である。特に1950年代初頭のマディ・ウォーターズ・バンドにおける活動は、その後のブルースの発展において極めて重要な役割を果たしたことで知られる。また、自身のソロキャリアにおいても、「That’s All Right」「Chicago Bound」といった楽曲で成功を収め、ブルースのスタンダードナンバーを生み出した。

ミシシッピ州ルールヴィルでジェイあるいはジェイムズ・アーサー・レインとして生を受けた彼は、幼少期を祖母とともにテネシー州メンフィスで過ごし、ここで最初の楽器であるハーモニカに触れる。幼なじみのスヌーキー・プライアーとの交流もこの頃に始まったとされる。その後ギターも手にし、10代後半にはアーカンソー州ヘレナやイリノイ州セントルイスで演奏活動を行うようになる。ヘレナではリトル・ウォルターと、セントルイスではロバート・ロックウッド・ジュニアら、後にブルース界で名を馳せるミュージシャンたちと出会い、経験を重ねていった。

1945年、ロジャーズはブルースの中心地へと移り住む。シカゴ到着後、1946年にはハーモニカ奏者、シンガーとしてJ・メイヨ・ウィリアムズ率いるハーレム・レコードで最初の録音を経験するも、残念ながら彼の名はクレジットされなかった。シカゴでの仕事を通じて、同僚のいとこであったマディ・ウォーターズと運命的な出会いを果たす。1947年頃には、ロジャーズ、マディ・ウォーターズ、そしてリトル・ウォルターという強力な布陣で演奏を共にするようになり、これが初期の「マディ・バンド」を形成する。彼らは時に他のバンドから仕事を奪うほどの人気を博し、「ヘッドカッターズ」や「ヘッドハンターズ」とも称された。このトリオは、後のシカゴ・ブルース、特にサウスサイド・ブルースのサウンドスタイルの基礎を確立する上で、決定的な役割を果たした。

マディ・バンドのメンバーとして活動する傍ら、ロジャーズはソロアーティストとしても独自の道を切り開く。1950年、チェス・レコードから発表したシングル「That’s All Right」が最初の成功をもたらし、その後のブルース界で長く歌い継がれるスタンダードとなった。彼は1954年までマディ・バンドに在籍しながらも、チェス・レコードから次々とソロ作品を発表。中でも1950年代半ばにリリースされた「Walking By Myself」は、唯一R&Bチャートにランクインするヒットとなり、彼の代表曲の一つとなった。これらの録音には、リトル・ウォルターやビッグ・ウォルター・ホートンといった名ハーモニカ奏者たちが参加し、そのサウンドを彩っている。

1950年代後半になると、ロックンロールの台頭などでブルースへの世間的な関心が薄れ、ロジャーズの音楽活動も徐々に縮小していった。1960年代初頭には短期間ハウリン・ウルフのバンドに参加したものの、その後約10年近くにわたり、音楽シーンから離れる期間が続く。この間、彼は生計を立てるためタクシー運転手として働いたり、洋品店を経営したりしていたが、1968年のシカゴ暴動による火災で店舗を失うという苦難も経験した。

しかし、ブルース・リバイバルの波に乗り、特にヨーロッパでの人気を背景に、ロジャーズは1970年代に入り再び公の場で演奏する機会が増える。1971年には再びレコーディングやツアーを行うようになり、1977年にはマディ・ウォーターズのアルバム『I'm Ready』のセッションにも参加している。1982年頃からは本格的にソロアーティストとしての活動を再開し、死去する1997年まで精力的にツアーとアルバム制作を継続した。

日本へも度々訪れる機会があった。1990年には「CHICAGO BLUES HERITAGE '90」に出演するため初来日を果たし、東京、京都、横浜で公演を行った。1997年にも出演が決定していた「パークタワー・ブルース・フェスティバル」への来日公演は、残念ながら入院のため中止となった。

後年の活動を通して、彼はブルース界での功績が再評価された。1995年にはブルース・ファウンデーションによってブルースの殿堂入りを果たし、2016年には彼の代表曲「That’s All Right」が同団体の「ブルース・レコーディングの古典」リストに加えられ、その歴史的価値が改めて認定された。

ジミー・ロジャーズは1997年12月19日、結腸癌のためシカゴのホリー・クロス病院にて73歳で死去した。彼の音楽的遺産は、ギタリストや音楽プロデューサー、レコーディングエンジニアとしても活躍した息子ジミー・D・レインに引き継がれている。

死去から約1年後の1998年10月には、彼の生前最後の録音となったアルバム『Blues Blues Blues』が、ジミー・ロジャーズ・オールスターズ名義でリリースされた。この作品には、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ロバート・プラントなど、ロック界を含む多数の著名ミュージシャンが参加しており、彼のブルースが世代やジャンルを超えて広くリスペクトされていたことを示している。ジミー・ロジャーズの音楽は、シカゴ・ブルースの確立に貢献しただけでなく、その後の多くのギタリストやバンドに影響を与え続け、今なお世界中で愛されている。

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