ジャウン

ジャウンとは

ジャウン（モンゴル語: ja'un）は、モンゴル系民族の間で用いられる軍事および行政の集団単位を指します。その語源はモンゴル語で「百」を意味し、転じて「百人の軍隊を編成することが可能な集団」と解釈されています。また、中国語では「百戸（長）」または「百人隊（長）」と訳されており、長い歴史を持つ概念です。

軍事と行政の関係

モンゴリアにおいて、遊牧国家は古くから十進法を基づく軍隊の編成を行ってきました。この編成は、10人、100人、1000人、さらには10000人といった基本単位に従っています。そのため、国民皆兵を基本とする遊牧国家では、軍と行政の間には密接な関係が存在しました。各軍事単位は、そのまま行政単位としても利用されることが多かったため、軍事編成は行政運営においても重要な役割を果たしていました。このような十進法に基づく軍事および行政の組織の歴史は、紀元前の匈奴時代にまでさかのぼります。

モンゴル帝国を築いたチンギス・カンの時代にも、十進法を採用した軍事と行政の組織が存在しました。特に、モンゴル軍は「千人隊制度（千戸制）」を基盤として、1000人を基本的な軍政および行政単位とし、それが国の統治に寄与しました。

チンギス・カンの軍事制度

チンギス・カンの編成した軍事制度では、「千人隊」が基本単位となっていました。そのため、多くの情報が「千人隊長」に関する史料として残されていますが、百人隊長や十人隊長に関する具体的な記録は極めて限られています。ただし、チンギス・カン自身が指揮する「千戸隊」は特別視され、その隊についての記録が『集史』に見られます。このような中で、チンギス・カンの下に存在した精鋭部隊として裏付けられています。

ジャウト・クリの称号

『モンゴル秘史』によれば、キヤトのテムジン（後のチンギス・カン）とケレイトのトオリルの連合が金朝の要請に応じてタタル部を討伐した結果、トオリルは「王」という称号を、テムジンは「ジャウト・クリ」という称号を受けました。この「ジャウト・クリ」が具体的に何を意味するのかについては不明確で、研究者の間で様々な解釈が提案されています。

1. 「ジャウクト（jauqut）」という北中国における隊長を指す説。
2. 「百人隊（ja'un）」の長を示す説。

これらの解釈は、歴史文書に登場する「ジャウクト」の語源が不明なことから生じています。また、「-quli」という名称は、他の言語では「奴隷」「しもべ」を意味する単語に関連しており、これがモンゴル語圏にどのように取り入れられたかについても研究が続けられています。

結論

ジャウンはモンゴル系民族の軍事および行政の単位としての重要な役割を果たし、軍と行政の相互関係の中で長い歴史を有しています。これにより、モンゴルの社会構造や統治体制の理解にも寄与する概念となっています。

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