ジャガー・SS100

ジャガーSS100：英国が生んだ名車

ジャガーSS100は、1935年から1940年にかけて、イギリスのコヴェントリーにあったSSカーズ社が製造した2人乗りのスポーツカーです。当時としては比較的安価でありながら、高級車に匹敵する高い性能を誇り、それまでコーチビルダーとしてのイメージが強かった同社を、名実ともに高級スポーツカーメーカーへと押し上げました。さらに、ジャガーブランドネームを初めて車名に冠したモデルとしても重要な位置付けにあります。これは、同時期に発売されたジャガー・マークIVと同様です。

洗練されたデザインと卓越した性能

ウィリアム・ライオンズによるデザインは、大型ヘッドライトと優雅なフェンダーラインが特徴で、同時代の英国車の中でも特に美しいものの一つとして広く称賛されています。その魅力的なスタイルは、単なる装飾にとどまらず、優れた空力特性にも貢献していると考えられます。

メカニズムの革新

シャシーは、ジャガー・マークIVのホイールベースを短縮したもので、前後とも半楕円リーフスプリングによる固定軸サスペンションという、当時としてはオーソドックスな設計でした。しかし、その心臓部であるエンジンは、革新的な技術が用いられています。

SS車に搭載されていた直列6気筒サイドバルブエンジンをベースに、ウィリアム・ヘインズとハリー・ウェスレイクが開発したOHVシリンダーヘッドを搭載。さらに、ボアとストロークを拡大し、SU製ツインキャブレターを装着することで、最高出力102bhp/4600rpmという、当時としては驚異的なパワーを実現しました。車両重量はわずか990kgに抑えられており、優れたパワーウェイトレシオを誇ります。

走る歓び

1937年、英国の自動車雑誌『The Autocar』が行ったロードテストでは、最高速度153km/h、0-60mph加速13.5秒を記録。当時395ポンドという価格を考えると、その性能は非常に高いものでした。しかし、メーカー公表値の最高速度160km/hにはわずかに届かず、この点を改善すべく、1938年には排気量3.5L、最高出力125bhpのSS100「3.5L」が追加されました。このモデルは最高速度163km/h、0-60mph加速10.4秒を記録し、名実ともに「SS100」の名にふさわしい高性能を実現しました。

希少価値と継承

クーペモデルのプロトタイプも存在しましたが、量産には至りませんでした。このクーペデザインは、後のジャガーXK120クーペデザインのモチーフとなっています。また、一部の車両はベアシャシーで販売され、顧客が自由にボディを架装することも可能でした。第二次世界大戦の影響もあり、SS100の生産台数は少なく、2.5Lモデルが198台、3.5Lモデルが116台、合計314台(うち49台は輸出)しか製造されませんでした。そのため、現在では良好なコンディションのSS100は非常に高価で取引され、10万ポンド以上の値が付くことも珍しくありません。

レプリカモデルもいくつか存在し、特に有名なのは1970年代に作られたパンサーJ72で、ジャガーのエンジンを使用しています。著名人では、俳優の夏木陽介氏が現在も所有していることで知られています。ジャガーSS100は、その稀少性と優れた性能、そして美しいデザインによって、今もなお多くのファンを魅了し続ける、まさに伝説的なスポーツカーと言えるでしょう。

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