ジャガー・XJR-5

ジャガーXJR-5：伝説への序章

ジャガーXJR-5は、アメリカン・モータースポーツの歴史に燦然と輝く一台です。ボブ・トゥリウス率いるグループ44が、IMSA GTP選手権参戦を目指して1982年に開発したプロトタイプレーシングカーで、その開発にはジャガー本社からの協力が得られました。グループ44は、これまでSCCA地方選手権やトランザムシリーズにジャガーEタイプやXJSで参戦しており、その経験がXJR-5開発に活かされました。

開発の経緯と技術

ジャガーからの協力を得て、XJ-Sに搭載されていた5.3リッターV型12気筒エンジンがXJR-5に搭載されました。車名は、グループ44が開発した5台目のジャガー製レーシングカーであることに由来します。

シャシーは、エンジンとトランスミッションを一体化させたモノコック構造で、空力性能はロッキード社の風洞実験室を用いて徹底的に洗練されました。1983年には、排気量を6リッターに拡大したバージョンも登場しました。

XJR-5の優れたポテンシャルは、ジャガー本社関係者の目を惹きつけました。1983年5月、デレック・ベルによるテスト走行を経て、ジャガーは1984年4月、実に27年ぶりのル・マン24時間レースへの参戦を正式発表。XJR-5は同レースに参戦しました。

輝かしい戦績とル・マンへの影響

XJR-5のIMSA GTP選手権における活躍は目覚ましいものでした。1982年8月のロード・アメリカでの3位入賞を皮切りに、1983年4月にはロード・アトランタで初優勝を飾ります。同年は計4勝を挙げ、チームオーナー兼ドライバーのボブ・トゥリウスはドライバーズランキングで2位を獲得しました。

しかし、1984年にはポルシェ962の圧倒的な強さに苦戦を強いられ、マイアミでの1勝にとどまりました。1985年も同様の状況が続き、ロード・アトランタで1勝を挙げたのみでした。1986年以降は、改良型であるジャガーXJR-7が投入されることになります。

ル・マン24時間レースでは、1984年は予選19位、決勝はリタイヤという結果に終わりました。1985年は2台体制で参戦し、1台が11気筒化というトラブルに見舞われながらも13位で完走しました。

ジャガーのモータースポーツへの貢献

XJR-5の開発と参戦は、ジャガーのモータースポーツへの関与を大きく前進させました。ル・マンでの結果を踏まえ、ジャガーはトム・ウォーキンショーにグループCカーの開発を委託。1985年後半からスポーツカー世界選手権（WEC）に参戦を開始し、1988年のル・マン24時間レース優勝という偉業へと繋がっていったのです。XJR-5は、ジャガーのモータースポーツ史における重要な転換点となる一台と言えるでしょう。

参考文献

『ワールドカーガイド12ジャガー』ネコ・パブリッシング
黒井尚志『ル・マン 偉大なる草レースの挑戦者たち』集英社
* 『レーシングオンNo.472 Jaguar's C特集号』三栄書房

もう一度検索