ジャズ・イン・ザ・ガーデン

ジャズ・イン・ザ・ガーデン：異色のトリオが織りなす、鮮烈なジャズ・サウンド

2009年、世界的ベーシスト、スタンリー・クラーク率いるトリオが発表したアルバム『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』は、ジャズ・シーンに鮮烈なインパクトを与えました。この作品最大の特徴は、日本人ピアニスト、上原ひろみの参加です。

豪華ミュージシャンと意外性あふれる選曲

クラークは、長年にわたる親交のあるチック・コリアの推薦を受け、かねてからその才能に注目していた上原ひろみとの共演を実現。さらに、クラークが『リターン・トゥ・フォーエヴァー』時代からの盟友であるレニー・ホワイトがドラムスを担当し、豪華な顔ぶれが揃いました。

本作は、上原ひろみにとって初のストレート・アヘッド・ジャズのスタジオ・アルバムという点でも注目に値します。彼女のオリジナル曲「シシリアン・ブルー」と「ブレイン・トレーニング」に加え、上原のアイデアで取り入れられたマイルス・デイヴィスの名曲「ソーラー」のカヴァーも収録されています。

選曲の意外性も本作の魅力です。バラク・オバマ大統領当選を祝したクラークのオリジナル曲「パラダイム・シフト」、デューク・エリントンとジョン・コルトレーンの共演作からの選曲である「テイク・ザ・コルトレーン」、そしてアニメ映画『白雪姫』の主題歌「いつか王子様が」と、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのヒット曲「アンダー・ザ・ブリッジ」といったバラエティ豊かな楽曲が、ジャズアレンジによって新たな魅力を放っています。「さくらさくら」といった日本の伝統音楽も取り入れられており、グローバルな視点を感じさせる選曲となっています。

クラークとホワイトによるデュオ演奏、クラークと上原によるデュオ演奏も収録されており、それぞれの個性が際立つ演奏が聴けます。また、クラークと上原が共作した即興曲「グローバル・テュウィーク」は、二人の音楽的な化学反応を感じさせる一曲です。

圧巻の演奏力と高い評価

上原ひろみは、クラークとホワイトとの共演について「2人のインタープレイを目の当たりにするのは、豪華なボートに乗っているような気分だった」と語っており、その充実感をうかがい知ることができます。

『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』は、アメリカ『ビルボード』誌のコンテンポラリー・ジャズ・アルバム・チャートで5位、ジャズ・アルバム・チャートで12位を獲得。日本でもオリコンチャートに10週間ランクインし、最高23位を記録するなど、高い評価を得ました。

音楽評論家からも絶賛されています。オールミュージックのMichael G. Nastosは5点満点中4.5点をつけ、「熟達した演奏を超え、新鮮で独創的な音楽を創造している」と評しました。『ガーディアン』紙のJohn Fordhamは5点満点中4点をつけ、「活気と喜びに満ちた作品」と評し、PopMattersのスティーヴ・ホロヴィッツは10点満点中7点をつけ、「穏やかで意味のある沈黙に満たされているが、実験的でないわけではない」と、その独特の音楽性を高く評価しています。

まとめ

『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』は、豪華なメンバー、意外性のある選曲、そして圧巻の演奏力で聴く者を魅了する、まさに名盤と呼ぶにふさわしい作品です。ジャズ・ファンのみならず、幅広い音楽愛好家に聴いてほしい、一聴の価値のあるアルバムです。

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