ジャラール・ウッディーン・ルーミー

ジャラール・ウッディーン・ルーミー：神秘主義詩人と旋回舞踏の祖

ジャラール・ウッディーン・ルーミー（1207年-1273年）は、ペルシア語で書かれた神秘主義詩の巨匠であり、イスラーム神秘主義（スーフィズム）の重要な人物です。現代でも世界中で彼の詩が愛読され、その影響は多大なものがあります。

生涯

ルーミーは、現在のアフガニスタンにあたるバルフで生まれました。父は著名な神学者であり説教師でした。モンゴル帝国の侵攻を予見した父は、家族と共に故郷を離れ、西へと旅立ちます。その旅の過程で、ルーミーは様々な土地で人々との交流を持ち、ニーシャープールでは詩人アッタールと出会い、彼から貴重な書物を贈られたと伝えられています。

長旅の末、ルーミー一家はアナトリア（現在のトルコ）のコンヤに定住します。ルーミーは、そこでイスラーム神学や法学を学び、説教師として活動を始めました。

転機は、放浪のスーフィー修行者シャムスッディーン・タブリーズィーと出会った時でした。タブリーズィーとの出会いは、ルーミーの精神世界に大きな変革をもたらし、彼をスーフィズムへと導きました。タブリーズィーの影響を受け、ルーミーは詩作を始め、多くの抒情詩を生み出しました。

タブリーズィーの失踪後も、ルーミーは詩作を続け、代表作である『精神的マスナヴィー』を執筆します。これは、約25,000句にも及ぶ長編叙事詩で、イスラーム神秘主義の思想が深く表現されています。

ルーミーはコンヤで亡くなり、彼の霊廟は今も巡礼の場となっています。

作品

ルーミーの作品は、詩と散文の両方に及びます。

詩

『シャムセ・タブリーズ詩集』: シャムスッディーン・タブリーズィーとの出会いをきっかけに書かれた抒情詩集。師への深い愛情と神秘体験が表現されています。
『精神的マスナヴィー』: ルーミーの最高傑作とされる長編叙事詩。比喩や寓話などを用いて、イスラーム神秘主義の核心が描かれています。ペルシア語のクルアーンと呼ばれることもあります。

散文

『ルーミー語録』: ルーミーの教えをまとめた散文集。
『七説話』: ルーミーの説話を集めた作品。

ルーミーの作品は、ペルシア語だけでなく、トルコ語、英語、ウルドゥー語など、多くの言語に翻訳されており、世界中で読まれています。

思想

ルーミーの思想は、深い神秘体験に基づいています。彼は、神への愛と合一を強調し、自我の超越を説いています。彼の思想は、詩を通して表現されていますが、イブン・アラビーのような体系的な哲学体系とは異なり、より体験的、情熱的なものです。

旋回舞踏

ルーミーの弟子たちは、彼の教えに基づいて旋回舞踏（サマーウ）と呼ばれる儀式を行いました。これは、コマのように回転しながら踊り、神への陶酔状態に至る修行法です。旋回舞踏は、メヴレヴィー教団という教団によって継承され、現在でも行われています。

影響と評価

ルーミーの詩は、イスラーム世界のみならず、西洋にも大きな影響を与えました。20世紀には、イギリスの東洋学者であるレイノルズ・ニコルソンによる英訳によって、欧米での評価が確立されました。

2023年には、彼の作品群がユネスコの「世界の記憶」に登録されました。これは、ルーミーの文学的・精神的な遺産の普遍的な価値が認められたことを示しています。ルーミーは、今もなお、多くの人々に深い感銘を与え続けている、偉大な神秘主義詩人です。

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