ジャンニ・ライモンディ

ジャンニ・ライモンディ（1923年4月13日 - 2008年10月19日）は、20世紀中盤、特に1950年代から1970年代にかけて国際的に活躍したイタリアのテノール歌手です。彼は、その輝かしい高音と均質な響きを持つ声で知られ、リリコ・テノーレの代表的な存在として、幅広いレパートリーを誇りました。

生涯

ライモンディはボローニャで生まれ、マントヴァで声楽を学びました。1947年、故郷に近いブドリオの地方劇場で、ヴェルディの歌劇『リゴレット』のマントヴァ公爵役でデビューを果たし、すぐに北イタリアを中心に活躍を始めました。

1956年には、ミラノ・スカラ座にデビューし、カルロ・マリア・ジュリーニの指揮の下、マリア・カラスと共演し、ヴェルディの歌劇『椿姫』のアルフレード役を歌いました。この役は、当初ジュゼッペ・ディ・ステファーノが演じていましたが、数回の公演後に降板したため、ライモンディが代役を務めることになりました。このチャンスを活かし、ライモンディは聴衆からの支持を確固たるものにしました。

1957年には、ウィーン国立歌劇場でヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮の下、プッチーニの歌劇『ラ・ボエーム』のロドルフォ役を歌いました。カラヤンはライモンディを気に入り、その後も数多くの公演で彼を起用しました。1965年には、カラヤンが指揮し、フランコ・ゼフィレッリが演出した映画版『ラ・ボエーム』にも出演しました。

1965年からは、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場にも出演し、4シーズンで44回出演しました。ここでは、『ラ・ボエーム』に加え、ドニゼッティの歌劇『ランメルモールのルチア』のエドガルド役、シャルル・グノーの歌劇『ファウスト』のタイトルロールなどを歌いました。

しかし、ライモンディの主な活動場所は、やはりミラノ・スカラ座でした。彼はスカラ座に200回以上出演し、特に名誉とされるシーズン初日（12月7日）には、1966年、1967年、1970年、1971年の4シーズン出演しました。1960年代後半から1970年代前半にかけて、ライモンディはスカラ座を代表するテノールとして活躍しました。

1970年代後半に引退した後も、80歳を超えてからも声楽教師として後進の指導に当たりました。

評価

ジャンニ・ライモンディは、声量的には平均的なテノールでしたが、その声域全体にわたって均質な響きを持ち、特に最高音域での輝きは特筆すべきものでした。彼はロッシーニからプッチーニまで幅広いレパートリーをこなし、今日でも多くのリリコ・テノール歌手が目標とする存在です。

彼の不運は、商業録音に恵まれなかったことでした。これは、彼が主にイタリア国内で活動し、アメリカやイギリスといった主要なマーケットでの知名度が低かったこと、そして、1950年代にはジュゼッペ・ディ・ステファーノ、1960年代にはフランコ・コレッリやカルロ・ベルゴンツィ、1970年代に入るとプラシド・ドミンゴやルチアーノ・パヴァロッティといった、レパートリーの重なる著名なテノール歌手たちがいたことが原因と考えられます。

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