ジャンヌ・バレ

ジャンヌ・バレ：世界一周を果たした植物学者の助手

ジャンヌ・バレ（1740年7月27日 – 1807年8月5日）は、18世紀のフランス人女性で、ルイ・アントワーヌ・ド・ブーガンヴィルの探検航海に男装して参加し、世界一周を成し遂げたことで知られています。彼女は、植物学者フィリベール・コメルソンの助手として、航海における植物採集に大きく貢献しました。

生涯

ジャンヌ・バレは、ブルゴーニュ地域圏のLa Comelleで、日雇い労働者の娘として生まれました。彼女の初期の生活については記録が少なく、孤児であったとか、訴訟で財産を失ったといった話が残されていますが、これはコメルソンをかばうための作り話である可能性も指摘されています。しかし、彼女が読み書き能力を持ち、ある程度の教育を受けていたことは、彼女の出自が比較的裕福な家庭であったことを示唆しています。

1760年から1764年の間に、バレはコメルソンの家の女中として働き始めました。コメルソンの妻が亡くなった後、彼女は家事を仕切るようになり、1764年には婚外子をもうけました。この子供の父親はコメルソンである可能性が高いとされています。

コメルソンがパリに移ると、バレも同行し、彼の女中として働き続けました。コメルソンがブーガンヴィルの探検航海の博物学者に任命されると、健康状態に不安があった彼は、看護と身の回りの世話、そして採集した資料の整理を行う人物を必要としていました。女性の乗船が許可されていなかったため、バレは男装して乗船することになり、コメルソンとの関係を隠すために、出発直前に雇われたことになりました。

1766年12月末、コメルソンとバレはエトワール号で出航しました。バレは船酔いや足の潰瘍に苦しみながらも、コメルソンの看護を行い、モンテビデオでは植物採集も行いました。コメルソンは足に問題を抱えていたため、機材の運搬や標本の整理などの肉体労働はバレが担当しました。リオデジャネイロでは、後にブーゲンビリアと名付けられる植物の採集も行いました。マゼラン海峡を越える間には、パタゴニアで植物採集を行い、バレは採集した植物の整理にも携わりました。

太平洋に入ると、バレが女性であることが露見しました。タヒチに上陸後、原住民に囲まれた際に発覚したという説が有力です。食料不足のため、オランダ領インドネシアで補給した後、モーリシャスに停泊した際、コメルソンの知り合いである植物学者ピエール・ポワブルが植民地の監督官をしており、コメルソンとバレはポワブルの客として滞在することになりました。モーリシャスでも、バレはコメルソンの看護と世話を続け、マダガスカルやブルボン島への採取旅行にも参加しました。コメルソンは1773年に病死しました。

その後、バレは居酒屋で働いて生計を立てていましたが、1774年にフランス陸軍の下士官ジャン・ドゥベルナと結婚し、1775年頃にフランスに帰国しました。これにより、バレはブーガンヴィルの本隊から6年遅れて、世界一周を成し遂げた最初の女性となりました。1776年にはコメルソンの遺産を受け取り、その資金で夫の故郷で鍛冶屋を開業し、生活しました。

1785年、バレはブーガンヴィルの世界一周航海でコメルソンを助けた功績により、年200ルーブルの年金が与えられることになりました。彼女は1807年8月5日に67歳で亡くなりました。

採取活動

バレは、1766年から1769年にかけて、コメルソンと共に植物の採取活動を行いました。その対象地域は、現在のアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、フランス領ポリネシア、インドネシア、マダガスカル、モーリシャス、レユニオン島など、広範囲に及びました。

ジャンヌ・バレの生涯は、困難に立ち向かい、自身の才能を発揮した女性の物語として、今もなお多くの人々に感銘を与えています。

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