ジャン・アラン

ジャン・アラン：夭折したフランスの作曲家・オルガニスト

ジャン・アラン（本名ジャン＝アリスト・アラン、1911年2月3日 - 1940年6月20日）は、20世紀フランスで活躍したオルガニストであり、作曲家です。パリ郊外のサン＝ジェルマン＝アン＝レーに生を受け、第二次世界大戦中に軍務中にソミュール近郊で命を落としました。彼の残した楽曲は、オルガン曲を中心に管弦楽曲なども含め、そのオリジナリティあふれる音楽性によって、20世紀音楽の中でも特にユニークな作品群と位置づけられています。

音楽は彼の家庭環境と深く結びついていました。父アルベールもまたオルガニストであり作曲家、さらにはオルガン建造家という多才な人物で、アレクサンドル・ギルマンやルイ・ヴィエルヌに師事していました。ジャンは、ヴェルサイユのサン＝ルイ教会のオルガニスト、オギュスタン・ピエルソンからピアノの手ほどきを受け、オルガンの基礎は父から学んでいます。

1927年から1939年にかけてパリ音楽院に在籍し、輝かしい成績を収めました。アンドレ・ブロックに和声法、ジョルジュ・コサードにフーガを師事し、それぞれのクラスで首席を獲得。オルガンはマルセル・デュプレの指導を受け、1939年にはオルガン演奏と即興演奏の両部門で首席に輝きました。作曲はポール・デュカスとジャン・ロジェ＝デュカスに学び、1936年にはオルガン組曲 作品48により「オルガン楽友賞」を受賞しています。1935年からはパリでオルガニストとして活動を開始し、シナゴーグでもオルガン奏者を務めました。現存する唯一の録音は、1939年にシナゴーグで行われた約6分間の即興演奏です。

作曲活動は18歳になった1929年に始まりましたが、第二次世界大戦が勃発する1939年までのわずか10年間で幕を閉じました。アランの音楽は、同時代のクロード・ドビュッシーやオリヴィエ・メシアンといった作曲家たちの影響だけでなく、東洋の音楽や哲学、舞踊への深い関心、ルネサンスやバロックといった古楽への造詣、そして当時の流行であったジャズの要素も取り入れた、多様な源泉からなるものでした。

合唱曲（レクィエムを含む）や室内楽、歌曲、ピアノ曲なども作曲していますが、とりわけオルガン曲の作曲家として特に知られています。最も有名な作品は《連祷 Litanies》ですが、この曲は当初、遊び心から生まれたものでした。初期の構想では「小さな手押し車を押す男の物語。男の後ろには20人の警官がいて、男に視線を投げかけている。」という副題を持つ一種の諧謔的な作品となるはずでした。しかし、作曲から数週間後、アルプスで妹のオディールが遭難するという悲劇に見舞われたことで、曲の性格は一変しました。アランは作品を「連祷」と改題し、「キリスト教徒が苦悩に打ちひしがれた時、その魂は神の慈愛を哀願するよりほかに見出しうる言葉はなく、同じように敬虔な祈りを終わることなく繰り返す。理性は限界に達し、魂の飛翔に追いつくのは信仰心ばかりである。」という、深い信仰心と絶望を映し出す序文を添えたのです。また、《3つの舞踏 Trois Danses》の第2曲「喪 Deuils」も、亡き妹オディールに捧げられ、「ある英雄のよすがの葬送音楽」として発表されました。

1935年にマドレーヌ・ペヤンと結婚し、3人の子をもうけました。機械に強い関心を持っていた彼は、オートバイを愛用しており、第二次世界大戦では第8機甲師団にオートバイ伝令として配属されます。1940年6月20日、ソミュール東部戦線でドイツ軍の先遣隊を偵察中に、ル・プティ＝ピュイの地でナチス・ドイツ軍部隊と遭遇しました。アランは降伏を拒み、果敢に攻撃を試みましたが、そこで命を落としました。

彼の末の妹であるマリー＝クレール・アランは、兄の作品を数多く録音し、国際的に有名なオルガニストとなりました。彼女は兄ジャンについて語る際に、その音楽への情熱と個性について触れています。また、作曲家モーリス・デュリュフレは、ジャン・アランへの音楽的な追悼として、《アランの名による前奏曲とフーガ Prélude et Fugue sur le nom d'ALAIN》を作曲しています。若くしてその才能を失ったジャン・アランですが、彼の残した独創的な作品群は、今なお多くの音楽家や聴衆に影響を与え続けています。

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