ジャン・フルネ

ジャン・フルネ（Jean Fournet, 1913年4月14日 - 2008年11月3日）は、フランスの指揮者です。彼は、明快な音楽構成と繊細で上品な感性を兼ね備えた、ラテン系の指揮者として知られています。

人物と経歴

1913年、フルネはフランスのルーアンで生まれました。パリ音楽院で指揮とフルートを学び、首席で卒業しました。彼の音楽の才能は早くから開花し、将来を嘱望されていました。

1936年、ルーアンで指揮者としてデビュー。病気で倒れた父の代役として舞台に立ち、その才能を発揮しました。その後、マルセイユ歌劇場の第2指揮者を経て、1944年にはフランス国立放送管弦楽団の常任指揮者およびパリ・オペラ＝コミック座の音楽監督に就任しました。また、1945年からはエコール・ノルマル音楽院で指揮法を教え、後進の育成にも尽力しました。

1958年、ドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』の日本初演のために初来日。当初、指揮はデジレ＝エミール・アンゲルブレシュトに依頼されていましたが、高齢を理由に断られたため、フルネが代役を務めることになりました。この来日をきっかけに、フルネは日本と深い縁を結び、その後も頻繁に来日して日本のオーケストラを指揮しました。

1961年、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任。その後、終身指揮者となりました。また、1968年から1973年まで、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めました。その後はアメリカに渡り、メトロポリタン歌劇場、シカゴ・リリック・オペラ、サンフランシスコ歌劇場などのオペラ界で活躍しました。

2005年12月21日、東京都交響楽団の定期演奏会を最後に引退。92歳という高齢でしたが、最後まで情熱的な指揮を披露しました。

2008年11月3日、オランダで逝去。95歳でした。

日本での活動

フルネは、日本フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、NHK交響楽団、東京都交響楽団、札幌交響楽団など、数多くの日本のオーケストラを指揮しました。特に東京都交響楽団とは深い繋がりがあり、定期招聘指揮者や名誉指揮者を務めました。また、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団など、海外のオーケストラとの来日公演も行っています。引退までの30年間、ほぼ毎年来日し、タクトを振りました。日本人演奏家を積極的に起用し、東京都交響楽団を率いて海外ツアーを敢行するなど、日本の音楽界に多大な貢献をしました。引退の場に日本を選んだことは、世界中から驚きの声が上がったと言われています。最後のプログラムは、ベルリオーズの序曲『ローマの謝肉祭』、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番（ピアノ：伊藤恵）、ブラームスの交響曲第2番でした。

引退後は若手指導に力を入れ、若手を楽団に推薦するなど、後進の育成に尽力しました。

芸風

フルネは、ベルリオーズ、フォーレ、デュカスなどフランス音楽を得意としていましたが、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどドイツ古典派からロマン派音楽についても、格調高い演奏で高い評価を得ていました。明るく牧歌的で、透明感のある独特の音色を持ち味とし、早めのテンポで上品な味わいを醸し出しました。晩年は、隅々まで清潔に歌い上げるような演奏をしました。カール・シューリヒトは、フルネを「最もドイツ的なフランス指揮者」と評し、フルネ自身もこの言葉に感激したと言われています。

人柄

温厚な人柄でしたが、リハーサルは厳しかったと言われています。一つのパッセージに2日間も費やすこともあり、「No good」としか言わない寡黙で厳しい一面もありました。最初の妻と死別した後、オランダ放送フィルのイングリッシュホルン奏者であるミリアム・ジェイクスと再婚。彼女は東京都交響楽団と協奏曲を共演したり、オーケストラに加わって演奏を披露したりしました。

もう一度検索