ジャン・ラクチュール

ジャン・ラクチュール：20世紀を駆け抜けたジャーナリスト、そして伝記作家

ジャン・ラクチュール（1921-2015）は、激動の20世紀をジャーナリスト、そして伝記作家として生きたフランスの知識人です。左派系新聞の記者として、ホー・チ・ミン、シハヌーク、ナセル、フルシチョフ、キッシンジャー、ロバート・ケネディといった、時代の寵児たちにインタビューを行い、その動向を世界に伝えました。

生い立ちと初期の活動

1921年、ボルドーのカトリック中産階級家庭に生まれたラクチュールは、パリ政治学院で外交官を目指します。しかし、第二次世界大戦が勃発すると、対独抵抗運動に参加。戦後は、フランス領インドシナ（ベトナム）に派遣され、従軍記者として活動します。そこで彼は、ホー・チ・ミン率いるベトミンと出会い、独立運動の現実を目の当たりにすることになります。

ジャーナリストとしての活躍

帰国後、ラクチュールはジャーナリストとして本格的に活動を開始します。『ル・モンド』紙では、海外県部門の編集長として、アルジェリア戦争、インドシナ戦争、エジプトの政治情勢などを精力的に取材。ラグビーや闘牛に関する記事も執筆するなど、幅広い分野で才能を発揮しました。

しかし、ラクチュールは、常に冷静な視点を持っていたわけではありません。アルジェリア民族解放戦線内部の対立を過小評価したり、文化大革命やクメール・ルージュに間違った期待を抱いたりしたこともありました。彼は、これらの過ちを率直に認め、自らのジャーナリストとしての活動を振り返る著書も発表しています。

伝記作家への転身

1970年代中頃から、ラクチュールは時事問題から離れ、伝記の執筆に力を注ぎ始めます。ド・ゴール、アンドレ・マルロー、レオン・ブルム、ミッテランといった、フランス現代史を彩る人物たちの生涯を、詳細な歴史的背景とともに描き出しました。ジャーナリズムで培った取材力と、アカデミズムで培った分析力を融合させた彼の伝記は、多くの読者を魅了し、高い評価を得ました。

脱植民地化への貢献

ラクチュールは、終生、脱植民地化運動を支持し続けました。フランスの植民地支配の矛盾を指摘し、独立を求める人々の声に耳を傾けました。彼の著作は、第三世界の国々の人々に勇気を与え、独立運動を後押ししました。

評価と影響

2015年、94歳で亡くなったラクチュールは、その生涯を通じて、ジャーナリスト、伝記作家、そして知識人として、社会に大きな影響を与えました。彼の著作は、現代史を理解するための貴重な資料として、今も読み継がれています。フランソワ・オランド大統領は「フランスの歴史が作られるのと同時にこれを書いた、情熱的で独立心が強く、勇敢な男であった」と称えました。

主要な著書

『ド・ゴール』
『アンドレ・マルロー』
『レオン・ブルム』
『フランソワ・モーリアック』
* 『シャンポリオン伝』

ジャン・ラクチュールは、20世紀の激動の時代を生き抜き、その足跡を後世に伝えた、偉大な知識人でした。

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