ジャン＝バティスト・レイ

ジャン＝バティスト・レイ（Jean-Baptiste Rey）は、1734年12月18日にフランス南西部のタルヌ＝エ＝ガロンヌ県ロゼルトで生を受け、1810年7月15日にパリでその生涯を閉じました。彼はフランス革命という激動の時代を含む長期にわたり、指揮者そして作曲家としてフランス音楽界、特にオペラの世界で重要な役割を果たしました。

キャリアの初期、レイはトゥールーズ、モンペリエ、マルセイユ、ボルドー、ナントといった南仏や西仏の主要都市にある歌劇場で指揮者として経験を積み、その実力を広く認められました。地方での成功が彼にパリへの道を開き、1776年には当時のフランス音楽の中心地であったパリの王立アカデミー（現在のオペラ座）に推薦される形で迎え入れられました。当初は首席指揮者であったルイ・ジョゼフ・フランクールの補佐を務めていましたが、わずか5年後の1781年にはフランクールの後任としてオペラ座の首席指揮者の地位に昇格します。

レイはパリ・オペラ座で1776年から1810年まで、実に34年という前例のない長期にわたって指揮者の要職を務めました。この期間はルイ16世の治世後期からフランス革命を経てナポレオンが台頭し皇帝となる時代までにあたり、彼はこの激しい政治的変遷の中にあってもその地位を維持し続けました。オペラ座の指揮者として、彼はクリストフ・ヴィリバルト・グルック、ニッコロ・ピッチンニ、アントニオ・サッキーニ、アントニオ・サリエリ、アンドレ＝エルネスト・グレトリ、エティエンヌ・メユール、そしてフランツ・ヨーゼフ・ハイドン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ガスパーレ・スポンティーニといった、ヨーロッパを代表する作曲家たちの数々の傑作をオーケストラと共に具現化しました。これらの作曲家たちの多くとは、作品の上演を巡る密接な協力関係を結んでいました。

指揮活動と並行して、レイは作曲家としても活動しました。1781年には、チェリストであった弟のルイ＝シャルル＝ジョゼフ・レイと共にオペラ『Apollon et Coronis（アポロンとコロニス）』を作曲し、同年中に初演しています。また、彼はアントニオ・サッキーニのオペラ『Arvire et Evelina（アーヴィルとエヴェリーナ）』において、第3幕の作曲を担当するなど、他者の作品への貢献も行いました。

オペラ座での活動の傍ら、レイは王室にも仕えました。1779年にはルイ16世の室内楽団の楽長に任命されています。

フランス革命中も、レイはオペラ座の指揮者として留まり続けました。変化する社会情勢の中で、彼は革命に関連する様々な祝典の音楽に関わることになります。1799年には、新設されたパリ音楽院（Conservatoire de Paris）の教員として招かれ、和声法の指導にあたりました。教育活動のためにソルフェージュの教材なども作曲しましたが、音楽院内部での対立に巻き込まれ、同じく教授であったジャン＝フランソワ・ル・スュールと共に短期間で職を追われてしまいます。

しかし、レイのキャリアはここで終わりませんでした。1803年、権力を掌握したナポレオン・ボナパルトによって、ル・スュールと共に召集を受けます。これにより、レイはナポレオン体制下での教会音楽における要職を得ることとなりました。ジャン＝フランソワ・ル・スュールが先任のジョヴァンニ・パイジェッロに代わって宮廷の音楽監督となった一方、ジャン＝バティスト・レイはルイ＝リュック・ロワゾー・ド・ペルスュイを助手として従え、首席指揮者の地位に就きました。そして、彼らのキャリアにおける最も象徴的な出来事の一つとして、1804年12月2日にノートルダム大聖堂で行われたナポレオンの皇帝戴冠式において、レイとペルスュイは二つの大規模なオーケストラを統率し、歴史的な儀式を音楽で彩りました。

その後もレイはパリを中心に活動を続け、1810年に同地で波乱に富んだ生涯を終えました。彼はフランスの音楽史、特にオペラの歴史において、革命前夜から帝国時代にかけての転換期を支えた重要な存在として記憶されています。

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