ジャービル・ブン・アフラフ

ジャービル・ブン・アフラフの概要

ジャービル・ブン・アフラフ（Abū Muḥammad Jābir b. Aflaḥ）は、12世紀のイベリア半島を舞台に活動したムスリムの天文学者および数学者です。ラテン名ではゲーベル（Geber）として知られ、その著作の一つ『アルマゲストの修正』（Iṣlāḥ al-Majisṭi）は、クレモナのジェラルドによってラテン語に翻訳され広まりました。ジャービルは、球面座標を扱う天文機器、トルクエトゥムの考案者ともされています。

生涯と背景

ジャービルの詳細な生涯についての情報は乏しいですが、彼に関する言及は数少ない文献に見られます。特に、1204年に亡くなった著名な哲学者マイモニデスが記した『迷える者への導き』において、ジャービルが「イブン・アフラフ・イシビーリー」として言及されており、彼の息子と個人的に関係があったとされています。この記述から、ジャービルは彼の活動がイブン・バーッジャが亡くなる1138年以前には始まっていたと推測されます。

また、彼の著書『プトレマイオスの修正』には、著名な天文学者ザルカーリー（門の型に関連する天文学的概念の提唱者）の引用が含まれており、彼の活動が11世紀後期または12世紀初頭に行われていた可能性が高いです。ジャービルには「イシビーリー」というセビージャのニスバ（地名を基にした名称）が付けられており、彼がセビージャ出身またはそこに縁がある人物であったことが示唆されています。

トルクエトゥムの考案

ジャービルの最大の業績は、トルクエトゥムという天文機器の考案です。この器具は、プトレマイオスが示したアーミラリー天球儀やアストロラーベの構造を融合させたもので、球面座標の変換に使用されます。13世紀の天文学者たち、たとえばヴェルダンのベルナールやポーランドのフランコ（Franco of Poland）によっても言及があり、その影響力は広範囲に及びました。

後世への影響

中世ヨーロッパの学者たちは彼をゲーベル（Geber）と呼びましたが、同名の錬金術師ジャービル・ブン・ハイヤーンと区別するため、「天文学のゲーベル」や「ヒスパニアのゲーベル」という称号も使われました。ジャービルの著作『アルマゲストの修正』は1534年に印刷され、その影響力は説得力があります。しかし、後の研究者によっては、この著作が「修正というほどでもない」と評価されることもあります。また、彼の三角法に関する考察は、9世紀のバッターニーの見解に比べると一歩後退しているとも指摘されています。

たとえジャービルが中世のアラブ＝イスラーム圏において最も重要な天文学者でなかったとしても、彼の著作がラテン語に翻訳され、西洋の学問に大きな影響を与えたため、ヨーロッパの科学史においては魅力的な存在であることは間違いありません。この点に関して、彼の業績は翻訳がなされなかった他の学者たち、たとえばアブル・ワファー・ブーズジャーニーとの違いを際立たせます。

結論

ジャービル・ブン・アフラフは、12世紀におけるイベリア半島の学問において重要な役割を果たしました。彼の活動と業績は、天文学と数学における進展に寄与し、近代ヨーロッパにおける科学の発展にも影響を及ぼしました。その知識と技術が次の世代に受け継がれることで、彼の名は未来へと繋がっていったのです。

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