ジュディッタ・パスタ

ジュディッタ・パスタ：伝説のソプラノ歌手

ジュディッタ・アンジョラ・マリア・コンスタンツァ・パスタ（旧姓ネグリ、1797年 - 1865年）は、19世紀前半に活躍したイタリアを代表するソプラノ歌手の一人です。彼女の歌声は、その並外れた声域と、ドラマティックな表現力で多くの人々を魅了し、後世のオペラ歌手、マリア・カラスと比較されるほどでした。

音楽の道へ

パスタは、ミラノでジュゼッペ・スカッパやダヴィデ・バンデラーリ、そしてジローラモ・クレシェンティーニやフェルディナンド・パエールといった著名な音楽家たちに師事し、声楽の研鑽を積みました。1816年、ミラノの劇場でスカッパのオペラ「Le tre Eleonore」の世界初演でデビューを果たし、プロのオペラ歌手としてのキャリアをスタートさせました。同年にはパリのイタリア劇場にも出演し、「ドン・ジョバンニ」のドンナ・エルヴィーラ役などを演じました。

ヨーロッパでの活躍

初期のロンドンデビューは不評でしたが、スカッパの下でさらに訓練を重ねた後、1819年にヴェネツィアで成功を収めました。1821年から1822年にかけてのパリでの公演では、彼女の広い声域と激しい表現力が高く評価され、センセーションを巻き起こしました。その後、1824年から1837年まで、ロンドン、パリ、ミラノ、ナポリなどの主要都市で定期的に歌い、国際的な名声を確立しました。

初演と指導

パスタは、ドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」（1830年、ミラノ）や、ベッリーニの「夢遊病の女」（1831年、ミラノ）、「ノルマ」（1831年、ミラノ）といった重要なオペラの初演で主役を務めました。また、歌唱指導にも熱心で、コントラルトのエマ・アルベルタッツィやソプラノのマリアンナ・バルビエーリ＝ニーニなど、多くの才能ある歌手を育てました。アデレード・ケンブルは、パスタから指導を受けた経験を回顧録に記しています。

声と評価

パスタの声は、「ソプラノ・スフォガート」と呼ばれる、非常に広い声域を持つものでした。Aから高音のC#まで、時にはDまで出すことができたと言われています。また、ソプラノとコントラルトの両方を容易に歌いこなすことができたという、稀有な才能の持ち主でした。彼女の声は、多様な音色を持ち、その豊かさは、音楽表現の幅を広げる要素となりました。

晩年

ジュディッタ・パスタは、1865年、イタリアのコモ県のブレーヴィオで68歳で亡くなりました。彼女の音楽への貢献は、今日でも高く評価されており、オペラ史における重要な人物として記憶されています。

参考文献

"Giuditta Pasta glory of Belcanto" by Giorgio Appolonia, EDA, Torino, 1997.
The Great Singers, by Henry Pleasants, Simon & Schuster, Inc., 1966/81. ISBN 0-671-42160-3
* Giuditta Pasta: A Life on the Lyric Stage, by Kenneth Stern, OPERAPHILE PRESS, 2011. ISBN 978-0-578-07406-1

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