ジュリアーノ・ダ・サンガッロ

ジュリアーノ・ダ・サンガッロの生涯と業績

ジュリアーノ・ダ・サンガッロ（Giuliano da Sangallo, 1445年 - 1516年10月20日）は、初期ルネサンスのイタリアを代表する建築家、彫刻家、そして造兵技師です。彼は革新的な建築家というよりも、初期から盛期ルネサンスのデザイン様式を忠実に継承し、その発展に寄与しました。サンガッロは、卓越した建築家を輩出した家系に生まれ、その才能を遺憾なく発揮しました。

生い立ちと初期の活動

ジュリアーノは、フィレンツェでフランチェスコ・ディ・パオロ・ジャンベルティの息子として誕生しました。父は木工職人であり、コジモ・デ・メディチと親交があり、建築にも関わっていました。サンガッロ家は、ジュリアーノの他にも弟のアントニオ（イル・ヴェッキオ）、甥のアントニオ（イル・ジョヴァネ）といった優れた建築家を輩出しています。

ジュリアーノは、弟とともに城塞建築家兼木細工師のフランチェスコ・ディ・ジョヴァンニ・ディ・フランチェスコに師事し、建築の基礎を学びました。彼の才能は早くから認められ、数々のヴィラ設計案の中から、ロレンツォ・デ・メディチの目に留まり、その庇護を受けることとなります。

ロレンツォ・デ・メディチとの関係

1480年、ジュリアーノはロレンツォ・デ・メディチの命を受け、ヴィラ・メディチ（ヴィラ・デル・ポッジョ・ア・カイヤーノ）の建設に着手しました。このヴィラは、彼の代表作の一つとして知られています。その後、親善政策の一環としてナポリへ赴きましたが、数年後にフィレンツェへ帰郷し、ロレンツォ・デ・メディチの命により、数々の建築設計に携わりました。

ロレンツォの死後も、メディチ家に仕え、弟のアントニオとともにポッジボンシのポッジョ・インペリアーレ城塞の建設にも従事しました。また、1484年には、プラートのサンタ・マリア・デッレ・カールチェリ聖堂の設計を担当しました。この聖堂は、熱狂的な聖母崇拝に対応するために計画されたもので、彼の設計思想が反映されています。

主要作品と関与したプロジェクト

1489年に着工したパラッツォ・ストロッツィの計画にも関与したとされていますが、彼の貢献度については疑問が残されています。1491年にはパラッツォ・ゴンディの設計を手掛けました。その後、1492年にはフィレンツェの親善政策によりミラノへ赴き、レオナルド・ダ・ヴィンチと会談しています。

ミラノを去った後、1499年から1500年にかけて、ロレートのマドンナ聖堂の円蓋工事の指揮を執りました。この工事は、ジュリアーノ・ダ・マイアーノが着手しながら中断していたもので、その後、フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ、ドナト・ブラマンテ、アンドレア・サンソヴィーノらが関わることになります。

ローマでの活動と晩年

ジュリアーノは、フィレンツェとローマを行き来しながら、多くのプロジェクトに携わりました。ローマでは、1514年にサンタ・マリア・デラニマ教会の設計に従事しました。特に重要なのは、1505年にドナト・ブラマンテと共同で行ったサン・ピエトロ大聖堂の実測調査です。建設計画ではブラマンテ案に敗れましたが、1514年から1515年まで大聖堂の補佐建築家を務めました。

1516年、ジュリアーノはフィレンツェで亡くなり、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂に埋葬されました。

主要作品一覧

1480年着工・1485年完成：ヴィラ・メディチ（ヴィラ・デル・ポッジョ・ア・カイヤーノ）（フィレンツェ）
1484年着工・1491年完成：サンタ・マリア・デッレ・カールチェリ聖堂（プラート）
1489年着工・1495年完成：サント・スピリト聖堂の聖器室（フィレンツェ）
1489年着工・1539年完成：パラッツォ・ストロッツィ（フィレンツェ）（貢献度については諸説あり）
1491年着工・1501年完成：パラッツォ・ゴンディ（フィレンツェ）
1514年設計：サンタ・マリア・デラニマ教会（ローマ）
1515年設計：サン・ロレンツォ教会のファサード計画案（ローマ）

ジュリアーノ・ダ・サンガッロの影響

ジュリアーノ・ダ・サンガッロは、ルネサンス建築の発展に重要な役割を果たしました。彼の作品は、初期ルネサンスの様式を継承しつつ、独自の解釈を加えたもので、後世の建築家たちに大きな影響を与えました。彼の建築における几帳面さと細部へのこだわりは、ルネサンス建築の規範となりました。

関連書籍

ピーター・マレー著、桐敷真次郎訳『図説世界建築史　ルネサンス建築』（本の友社）
ジョルジョ・ヴァザーリ著、森田義之監訳『ルネサンス彫刻家建築家列伝』（白水社）
ニコラス・ペヴスナー他著、鈴木博之監訳『世界建築辞典』（鹿島出版会）

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