ジュリアーノ・デ・メディチ

ジュリアーノ・デ・メディチは、1453年10月28日にフィレンツェで生まれました。父はピエロ・ディ・コジモ・デ・メディチ、母はルクレツィア・トルナブオーニであり、兄には後に「イル・マニフィコ（偉大なるロレンツォ）」と称されるロレンツォ・デ・メディチがいます。

父の死後、ジュリアーノは兄ロレンツォと共に、メディチ家の銀行業を継ぎ、フィレンツェ共和国の政治運営にも携わるようになりました。メディチ家は当時、フィレンツェにおいて絶大な影響力を持っていましたが、その勢力拡大を快く思わない勢力も存在しました。

1478年、メディチ兄弟は、パッツィ家の陰謀に巻き込まれます。この陰謀は、フィレンツェにおけるメディチ家の影響力を削ぎたいと考えるローマ教皇シクストゥス4世の指示によって画策されたとされています。教皇は、メディチ家のライバルであったパッツィ家と共謀し、メディチ家を排除しようとしたのです。

4月26日の朝、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂でミサに参列していた兄弟を、パッツィ家の共謀者たちが襲撃しました。ロレンツォは辛くも逃れて軽傷で済みましたが、ジュリアーノはフランチェスコ・デ・パッツィによって無残にも殺害されました。この事件は「パッツィ家の陰謀」として知られ、フィレンツェ市民に大きな衝撃を与えました。

ジュリアーノは、「イル・ベッロ（美しきもの）」と呼ばれるほどの長身の美男子で、多くの女性を魅了しました。中でも、当時フィレンツェ随一の美女と謳われたシモネッタ・ヴェスプッチは、ジュリアーノの愛人でした。しかし、シモネッタはジュリアーノよりも先に、わずか22歳という若さで病死してしまいます。

また、ジュリアーノには、アントーニオ・ゴリーニの娘とされるフィオレッタ・ゴリーニという愛人もいました。二人の間には、庶子であるジュリオ・デ・メディチがいます。ジュリオは後に枢機卿となり、1513年には従兄弟であるレオ10世によって「秘密結婚」の事実が公表されました。さらにジュリオは、後に第219代ローマ教皇クレメンス7世として、その名を歴史に刻むことになります。

ジュリアーノ・デ・メディチの短い生涯は、ルネサンス期のフィレンツェにおける権力闘争の激しさと、メディチ家の興隆、そして芸術と文化が花開いた時代の光と影を映し出しています。彼の死は、フィレンツェの歴史において大きな転換点となり、メディチ家の権力基盤をより強固にする契機ともなりました。

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