ジュリアーノ・デ・メディチの肖像 (絵画館)

ジュリアーノ・デ・メディチの肖像

サンドロ・ボッティチェッリによる『ジュリアーノ・デ・メディチの肖像』は、ルネサンス期のフィレンツェで活躍したメディチ家のジュリアーノ・デ・メディチを描いた肖像画です。この作品は、1478年にパッツィ家の陰謀によって暗殺されたジュリアーノの悲劇的な死を背景に、その人物像を後世に伝える重要な資料となっています。

ジュリアーノ・デ・メディチとは

ジュリアーノ・デ・メディチは、1453年にピエロ・ディ・コジモ・デ・メディチとルクレツィア・トルナブオーニの間に生まれました。兄ロレンツォ・デ・メディチの4歳年下の弟であり、父の死後、兄と共にメディチ家の後継者となりました。当初は政治的役割は小さいものでしたが、次第に兄を補佐するようになり、兄が不在の際には政治や外交を代行するまでに成長しました。

ジュリアーノは多くの結婚の話がありましたが、マルコ・ヴェスプッチの妻であるシモネッタ・カッタネオを深く愛していました。1475年に開催された馬上槍試合では、シモネッタをイナモラータ（愛する女性）に選びました。しかし、シモネッタは翌年に亡くなり、その2年後にはジュリアーノ自身もパッツィ家の陰謀により、フィレンツェ大聖堂で命を落としました。ジュリアーノの遺児ジュリオ・デ・メディチは、後にローマ教皇クレメンス7世となっています。

ボッティチェッリの肖像画

現存するボッティチェッリのジュリアーノ・デ・メディチの肖像画は、ほとんどが彼の死後に制作されたものです。これらはメディチ家からの依頼、あるいはメディチ家の支持者たちが忠誠を示すために依頼したと考えられています。

ボッティチェッリは、ジュリアーノを四分の三正面を向いた胸像として描いています。ジュリアーノは鷲鼻で、眉間から額にかけて深いしわが刻まれています。顎まで伸ばした髪と、プリーツのあるハイネックの赤いチュニックが特徴的です。ベルリン、ベルガモ、ワシントンD.C.に所蔵されているバージョンでは、ジュリアーノは伏し目がちで、ほとんど目を閉じているように見えます。この描写は肖像画としては異例であり、ジュリアーノの死を暗示していると考えられています。一部の研究者は、ボッティチェッリがジュリアーノのデスマスクをもとにカルトンを作成し、それをもとに各バージョンを描いたという説を唱えています。

ただし、各バージョンは保存状態が悪く、ボッティチェッリの真筆性や制作年代、制作順序については議論の余地があります。1478年に彫刻家ベルトルド・ディ・ジョバンニが制作したジュリアーノ・デ・メディチの記念メダルのモデルになった可能性も指摘されています。

作品の来歴と所蔵

絵画館の肖像画は、元々ストロッツィ宮殿にありました。1878年にストロッツィ家のコレクションが売却された後、ベルリン美術館に購入されました。

各バージョンの所在

ベルリン絵画館
ベルガモのアッカデミア・カッラーラ
ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アート
ミラノのクレスピ・モルビオ・コレクション（異なるバージョン）

これらの作品は、ジュリアーノ・デ・メディチという人物の悲劇的な運命と、ルネサンス美術の豊かさを今に伝える貴重な遺産です。ボッティチェッリの描くジュリアーノの肖像は、単なる歴史上の人物画としてではなく、見る者の心を揺さぶる深い感情を湛えています。

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