デスマスク

デスマスクとは

デスマスク（英語：death mask）とは、故人の顔を石膏や蝋を用いて型取ったものであり、その目的は多岐に渡ります。故人を偲ぶための遺品としての保存や、肖像を制作するための一次資料としての確保がその主な目的です。さらに、死生観や芸術性に基づいた作品の創出、法医学の資料としての価値も有しています。また、時にはデスマスクの表面に色を施して肖像画に仕上げることもあります。

デスマスクの歴史

古代ギリシアの歴史家ポリュビオスによると、古代ローマでは、故人に似せて作成されたマスクが一般家庭で大切に保管され、葬儀時にはそのマスクを装着した者が葬列に加わる習慣が存在しました。このことは、テオドール・モムゼンによってローマの貴族階級、つまりパトリキの特権として始まったとされており、その後、一般市民であるプレブスにも広まっていきました。

17世紀に入ると、デスマスクは故人の彫像とともに告別式で使われることが一般的になり、有名人のデスマスクも数多く作成されるようになりました。これにより、写真が普及する以前の人物の顔を知る貴重な資料として、後世に貢献しています。18世紀から19世紀にかけて、デスマスクは身元確認や法医学的資料としても利用されるようになりました。たとえば、イギリスのキングズベリー・ラン事件において、身元不明の被害者の情報を得るためにデスマスクが作成され、公に公開されました。これにより、デスマスクは死者を記憶するだけでなく、疑似科学的・科学的な用途でも利用されることになりました。

著名人のデスマスク

歴史上、多くの著名人のデスマスクが作成されています。紀元前には、古代エジプトのファラオであるツタンカーメンや、ローマの政治家ガイウス・ユリウス・カエサルがその例です。そこから時代が進むと、ダンテ・アリギエーリ、ウィリアム・シェイクスピア、ナポレオンボナパルト、エイブラハム・リンカーンなど、近代に名を馳せた人物のデスマスクも数多く残されています。

19世紀後半から20世紀にかけても著名人のデスマスクは作成され続け、その中には夏目漱石や魯迅、ニコラ・テスラなど、文学や科学の分野で影響を与えた人物たちが含まれます。特に、日本の作家夏目漱石のデスマスクは弟子たちによって作成され、現在も厳重に保管されています。

現代におけるデスマスクの意義

今日、デスマスクはその実用性が薄れたものの、歴史や文化を知るための資料としては重要な役割を果たしています。また、デスマスクとは対照的に、生前の人物の顔を型取るライフマスクも存在しており、それにより生前の姿を後世に伝える試みも行われています。

デスマスクは、ただ死者を記憶するための作品に留まらず、様々な文化や時代を反映した貴重な資料であり、今後もその意義は失われることはないでしょう。

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