ジョイス (歌手)

ジョイス・モレーノ：ブラジル音楽の革新者

ジョイス・モレーノ（Joyce Silveira Moreno）は、1948年1月31日にブラジルのリオデジャネイロで生まれた、シンガーソングライターです。彼女は、ボサノヴァの伝統を受け継ぎながらも、独自の音楽性を追求し、ブラジル国内外で高い評価を得ています。

初期の音楽活動

15歳で音楽グループ「コンジュント・サンバカーナ」に参加し、歌手としてのキャリアをスタートさせました。1967年には、自作の曲でソング・フェスティバルに出場しますが、歌詞が当時の社会に受け入れられませんでした。しかし、翌年にはファースト・アルバムを発表し、音楽活動を本格化させます。大学ではジャーナリズムを専攻し、新聞記者としても活動していました。

ジョイスは、1960年代からボサノヴァの流れを汲んだ楽曲を発表し、「スカートをはいたシコ・ブアルキ」と評されることもありました。1969年には、トニーニョ・オルタとの共作でソング・フェスティバルに入賞。1970年には、タンバ・トリオのメンバーであったルイス・エサ率いるグループに参加し、メキシコに滞在中にジョアン・ジルベルトと出会いました。

結婚と活動休止、そして再開

1972年にネルソン・アンジェロと結婚し、2人の子供を授かります。出産と子育てのため一時活動を休止しますが、1975年にヴィニシウス・ヂ・モライスに誘われ、南米～ヨーロッパ・ツアーに参加したことがきっかけとなり、音楽活動を再開しました。1979年には、彼女が作曲した「或る女（Essa Mulher）」がエリス・レジーナに取り上げられ、コンポーザーとしても注目を浴びます。

1980年代以降の活躍

1980年には、アルバム「フェミニーナ」を発表し、収録曲「クラレアーナ(Clareana)」がブラジル国内でヒットしました。1985年には、世界歌謡祭に参加するため初来日。1990年代には、アメリカのフュージョン・レーベルからアルバムをリリースする一方で、ヨーロッパのクラブにも出演し、高い評価を得ました。ブラジル音楽ブームが起こっていたロンドンでは、牽引車的な存在となりました。

ジョイスは、5ヵ国語に堪能であり、ヨーロッパ諸国でも活動を展開しました。1994年には、音楽生活25周年を迎え、記念作品にはガル・コスタ、ジルベルト・ジル、ワンダ・サーらが参加しました。1996年には、アントニオ・カルロス・ジョビンに捧げたアルバムを発表。1998年には、ドリ・カイミのほかジョー・ロヴァーノやマルグリュー・ミラーらと共演し、エリス・レジーナゆかりの曲を取り上げました。

2000年代以降も、ドリ・カイミとの共作アルバムや、長女クララと次女アナとの共演など、精力的に活動を続けています。また、日本のレーベルからも作品を発表しており、日本との縁も深いアーティストです。

多彩な才能と影響力

ジョイス・モレーノは、「ボサノヴァ第二世代」と呼ばれ、過去にはホベルト・メネスカルとも共演しています。彼女の音楽は、ボサノヴァの伝統を受け継ぎながらも、ジャズやフュージョンの要素を取り入れた、独自のサウンドが特徴です。また、作曲家としても才能を発揮し、多くのアーティストに楽曲を提供しています。

ジョイスは、1985年の初来日以来、毎年のように来日公演を行っており、日本のファンにも愛されています。彼女の音楽は、ブラジル音楽の豊かさと多様性を伝えるとともに、国境を越えて多くの人々に感動を与え続けています。

娘のクララ・モレーノとアナ・マルチンスも歌手として活動しており、音楽一家としても知られています。

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