ジョゼ・デ・アンシエタ

ジョゼ・デ・アンシエタ：ブラジルの聖人、宣教師、そして文筆家

ジョゼ・デ・アンシエタ（1534年3月19日 - 1597年6月9日）は、スペイン領カナリア諸島出身のイエズス会士であり、16世紀後半にブラジルで宣教活動を行った人物です。2014年には教皇フランシスコによって聖人に列せられ、その功績は広く知られています。ブラジルの歴史に大きな影響を与え、サンパウロやリオデジャネイロの創立にも関与しました。また、文筆家としても知られ、ブラジルで最初の文筆家とされています。アンシエタは先住民との和平交渉にも尽力し、その後のブラジルにおける植民地形成に重要な役割を果たしました。

前半生

ジョゼ・デ・アンシエタ・ラレナは、1534年にカナリア諸島のテネリフェ島で、裕福な家庭に生まれました。父親はバスク地方の地主で、カール5世に対抗する反乱に参加して失敗し、テネリフェに逃れてきました。母親はテネリフェの征服者の末裔でユダヤ系でした。アンシエタは14歳でポルトガルに渡り、コインブラの王立芸術学校で学びました。彼は非常に信心深く、聖職に就くことを天命と感じ、1551年にコインブラのイエズス会に入会しました。在学中に背骨の病気を患い、生涯頭痛に悩まされることになりますが、非常に優秀な学生で、詩の才能にも恵まれていました。ポルトガル語とラテン語を母語のように読み書きできるようになりました。

ブラジルでの布教活動

1553年、アンシエタはイエズス会が新大陸に派遣する第3陣の一員として、ブラジルに渡りました。彼は、1534年に初めて作られたサン・ヴィセンテという村に到着し、そこでタプイア・インディオ（先住民）と初めて接触しました。同じ年、マヌエル・ノブレガ宣教師が、13人の宣教師をピラチニンガに送り、布教活動の拠点を築きました。1554年1月25日には、その場所で初めてミサが執り行われ、アンシエタはイエズス会の同僚とともに、先住民のキリスト教への改宗、洗礼、教理問答、教育活動を行いました。

アンシエタは、先住民にラテン語を教える一方で、古トゥピ語を学び、辞書と文法をまとめました。これは、イエズス会が「野蛮人」と出会った後の、目的や習慣となっていました。サンパウロ・ピラチニンガ・イエズス会学校は、すぐに拡張を始め、居住民の核として栄えるようになりました。

一方で、ポルトガル人植民者が先住民を奴隷化しようとしたことから、先住民の部族は反乱を起こし、タモヨ連合という同盟を形成しました。フランス人移住者たちもこの動きを支援し、1555年にはリオデジャネイロ付近のグアナバラ湾に移住しました。タモヨ連合は、1562年から1564年の間に数回にわたってサンパウロを攻撃しましたが、町はこれを食い止めました。

アンシエタとノブレガは、ポルトガル人植民者とは異なる方法で先住民と接し、総督との摩擦を生じさせていました。彼らはイペロイグ村でタモヨ連合との和平交渉を始めました。アンシエタのトゥピ語の技能はこの交渉に不可欠でした。困難な交渉の末、アンシエタとノブレガは先住民の信頼を得て、タモヨ連合、トゥピ族、ポルトガル人の間で和平を確立しました。

しかし、ブラジルの新総督メン・デ・サーの甥であるエスタシオ・サーがフランス人入植者を追い払う命令を下したことから、平和は終わりを迎えました。1565年、彼は軍隊とともにサン・ヴィセンテを出発し、リオデジャネイロのポン・ヂ・アスーカルの麓に城壁を建設しました。

アンシエタは軍医、通訳として、ポルトガル人と同盟先住民、対フランス人と同盟先住民の戦いに参加しました。彼はまた、総督本部に報告する責任も負い、1567年のフランス人との勝利を得た最後の戦いにも参加しました。

その後の活動と死

アンシエタとノブレガについての悪いうわさが流れ、総督のメン・デ・サーは、1559年にユグノー難民の仕立て屋を逮捕したことについて彼らを非難しました。アンシエタが、異端者である仕立て屋を殺害したというのです。しかし、この話は後になって誤りであることが証明されました。

平和が訪れた後、ノブレガの指揮によってイエズス会の学校がリオに建設され、1570年のノブレガの死後はアンシエタが引き継ぎました。病弱な体にもかかわらず、アンシエタはリオデジャネイロ、バイーア、エスピリト・サント、サンパウロと広範囲を旅し、イエズス会の宣教活動を強化しました。

1577年、イエズス会総会長は、アンシエタをブラジルにおける会員の序列の最高位につけることを約束しました。1591年、健康が悪化したため、彼は業務の軽減を要請しました。彼は1597年6月9日にエスピリトサント州ヘリチバで亡くなり、3,000人以上の先住民に見送られました。彼は生前から超越的な存在のように考えられ、彼が説教したところ、ジャガーもおとなしくなったという伝説が残っています。

ジョゼ・デ・アンシエタは、「ブラジル文学」の創設者として、ノブレガと共にブラジル最初の宣教師として賞賛されています。彼の名は、エスピリトサント州のアンシエタやサンタカタリーナ州のアンシエタをはじめ、多くの場所や団体、病院、学校に名が残されています。1980年、教皇ヨハネ・パウロ2世によって列福され、「祝福されたジョゼ・デ・アンシエタ」の称号を受けました。そして、2014年4月3日、教皇フランシスコによって列聖され、聖人としての崇敬を集めています。

業績

アンシエタは、イエズス会の伝統に従い、多くの人々と交流を持ち、上役とは手紙で頻繁に連絡を取り合いました。彼はスペイン語、ポルトガル語、ラテン語、トゥピ語を流暢に使いこなし、これらの言語で多くの著作を残しました。彼の著作は、手紙、報告書、歴史的な遺稿、説教、神学や宗教に関する著作、演劇作品、詩、そして初めて古トゥピ語で出版された作品など多岐にわたります。また、彼は聖歌を作り、劇の脚本も書きました。特に有名なのは、聖母マリアに捧げる長編詩で、毎朝イペロイグ浜の砂に書き、後に紙に書き留めたと伝えられています。これらの理由から、アンシエタはブラジルの文学と音楽の守護者とされています。

アンシエタは歴史家、動物・植物学者（いくつかの新種の動植物について記述）、外科医、内科医でもありました。彼の詳細な報告書は、当時のインディアンやヨーロッパ人の生活様式、知識、習慣、そしてブラジルの野生生物や地理を理解する上で、今もなお重要な資料となっています。

1560年頃に書かれた詩『De Gestis Meni de Saa』では、ポルトガル人兵士が「果てしない大自然」を征服するために戦った「勇者の偉業」が描かれています。

関連項目

ブラジルの歴史
イエズス会の伝道
インカルチュレーション
南極フランス植民地
古トゥピ
アンシエタと命名されたものの一覧

外部リンク

Joseph Anchieta. Catholic Encyclopedia On-Line
A Catalog of Anchieta's Works. National Library Foundation, Brazil (In Portuguese)
Association for the Canonization of Anchieta (in English)
José de Anchietaの作品 （インターフェイスは英語）- プロジェクト・グーテンベルク
Jacques Le Balleur In the Portuguese-language version of Wikipedia
Cartas, Informações, Fragmentos Históricos e Sermões. (In Portuguese) Fac-simile digitized on-line reproduction of main publication of Anchieta's works (in Portuguese only)
* Portugal in America

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