ジョッキークラブ (アメリカ合衆国)

アメリカン・ジョッキークラブ：アメリカ競馬を彩る歴史と現在

アメリカン・ジョッキークラブは、アメリカ合衆国、そしてカナダの競馬界において重要な役割を担ってきた組織です。1894年の設立以来、競走馬の血統登録や管理、競馬関連事業などを通して、競馬の発展に貢献してきました。しかし、その歴史は栄光と衰退を繰り返し、現在の活動内容は設立当初とは大きく様変わりしています。

黎明期：混沌としたアメリカ競馬と統括組織の誕生

17世紀半ば、イギリスからアメリカに伝わった競馬は、各植民地で独自に発展しました。統一されたルールはなく、混沌とした状況が続いていました。こうした状況を打破するため、1735年にはサウスカロライナ州チャールストンでジョッキークラブが設立され、ルール制定に乗り出しました。その後も各地でジョッキークラブが設立されましたが、地域的な組織に留まり、全国規模での統制は実現しませんでした。

転機となったのは1865年、ニューヨーク州でのジェロームパーク競馬場の開設と、それに伴うアメリカン・ジョッキークラブの発足です。レナード・ジェロームとオーガスト・ベルモントという二人の実力者が中心となり、全国的な統括組織を目指して設立されました。当時、競馬界にはギャングによる不正や、ピューリタンによる反対運動が横行していましたが、アメリカン・ジョッキークラブは競馬の健全化を目指し、ジェロームパーク競馬場では八百長や薬物使用のない運営を実現しました。しかし、ジェロームの死去や、ニューヨーク・ジョッキークラブとの対立により、この最初のアメリカン・ジョッキークラブは瓦解します。

全盛期：アメリカ競馬の統括機関として

ジェームズ・ロバート・キーンら有力馬主たちによって1894年に再建されたアメリカン・ジョッキークラブは、競馬ルールの制定、そしてニューヨーク州裁判所によるそのルールの州内適用という法的裏付けを得ることに成功します。多くの競馬場がそのルールを採用し、アメリカン・ジョッキークラブは全米競馬を統括するほどの権力を手にしました。

衰退：州競馬委員会の設立と権限の剥奪

しかし、1930年代にフランクリン・ルーズベルト大統領が各州に競馬委員会を設立させると、アメリカン・ジョッキークラブの影響力は急速に低下しました。その後、1951年にはニューヨーク州での裁判で、1895年に得ていた権限が覆され、各州の競馬委員会に譲渡されたことで、事実上、全米統括組織としての役割を終えました。

現在：血統管理と情報提供の中核として

現在、アメリカン・ジョッキークラブは、かつてのような統括権限は持っていません。主な活動は、競走馬の血統登録、アメリカンスタッドブックの発行、そして大規模な競馬データベースであるエクイベースの運営などです。また、血統データベースであるエクインラインや、競馬専門誌「ブラッド・ホース」の発行元であるブラッド・ホースパブリケーションズなども傘下に抱えています。これらの活動を通して、アメリカ競馬界に貢献し続けています。

アメリカン・ジョッキークラブは、その歴史の中で、アメリカ競馬界に多大な影響を与えてきました。全米統括組織としての栄光と、権限喪失による衰退という、大きな変化を経験した組織の軌跡は、競馬の歴史を知る上で欠かせないものです。

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