ジョンストン (DD-557)

ジョンストン(DD-557): サマール沖海戦の英雄

アメリカ海軍フレッチャー級駆逐艦ジョンストン(DD-557)は、南北戦争の英雄、ジョン・V・ジョンストン大尉にちなんで命名された艦艇です。1943年10月27日、シアトル・タコマ造船所で建造され就役。チェロキー族とクリーク族の血を引くアーネスト・E・エヴァンズ少佐の指揮の下、太平洋戦線に投入されました。

戦歴

ジョンストンは、第二次世界大戦において数々の戦闘に参加しました。マーシャル諸島の戦いではクェゼリン環礁とエニウェトク環礁を砲撃、上陸部隊を支援しました。ソロモン諸島での哨戒任務では、カロリン諸島やブーゲンビル島を砲撃、日本海軍潜水艦伊176を撃沈する戦果も挙げています。グアムの戦いでは、戦艦ペンシルバニアと協力して日本軍陣地を砲撃、ペリリューの戦いでは護衛空母を護衛しました。

フィリピン侵攻作戦では、レイテ島への上陸作戦を支援し、敵の車列を攻撃しました。この際、ジョンストンは護衛空母6隻、駆逐艦2隻、護衛駆逐艦4隻と共に「タフィ3」と呼ばれる第77.4.3任務隊を構成、クリフトン・スプレイグ少将率いる護衛空母群の護衛任務に就きました。

サマール沖海戦

1944年10月25日、レイテ湾で発生したサマール島沖海戦は、ジョンストンの勇名を不朽のものとした戦いでした。圧倒的な戦力を持つ栗田艦隊(戦艦大和を含む)に対し、タフィ3は、はるかに劣る戦力で果敢に立ち向かいました。

この海戦において、ジョンストンは、エヴァンズ中佐の決断力と乗員の勇敢な戦いによって、敵艦隊を相手に奮戦しました。重巡洋艦熊野への攻撃、そして敵艦隊の中枢部への突撃は、敵の予想をはるかに超えるものでした。大口径砲弾の集中攻撃を受けながらも、ジョンストンは、5インチ砲による砲撃、そして魚雷攻撃で敵に大きな損害を与えました。

しかし、その勇敢な戦いも長くは続きませんでした。大和、長門、金剛などからの集中砲火により、ジョンストンは甚大な損害を受け、航行不能に陥りました。艦橋は破壊され、多数の死傷者が出ましたが、エヴァンズ中佐は負傷しながらも指揮を執り続けました。

それでもなお、ジョンストンは、護衛空母を守るため、最期の瞬間まで戦い続けました。敵駆逐艦の集中砲火を受け、ついに沈没。乗員327名中、141名が生き残るのみでした。エヴァンズ中佐は、行方不明となりました。

その後

ジョンストンは、6個の従軍星章を受章し、タフィ3は殊勲部隊章を贈られました。エヴァンズ中佐には名誉勲章が授与されました。

長らく行方不明だったジョンストンの残骸は、2019年と2021年に、それぞれ異なる調査隊によって発見されました。水深6,460mという深海で発見されたその姿は、その勇ましい戦いを今に伝えています。

その後も、ジョンストンの艦名を受け継いだ艦艇が建造され、その功績は後世に語り継がれています。

参考文献

生出寿『砲術艦長黛治夫　海軍常識を覆した鬼才の生涯』
木俣滋郎『日本水雷戦史』
駆逐艦雪風手記編集委員会『激動の昭和・世界奇跡の駆逐艦 雪風』
佐藤清夫『駆逐艦「野分」物語：若き航海長の太平洋海戦記』
重本俊一 他『陽炎型駆逐艦』
C・W・ニミッツ、E・B・ポッター 著、実松譲、冨永謙吾 訳『ニミッツの太平洋海戦史』
福田幸弘『連合艦隊 — サイパン・レイテ海戦記』
防衛庁防衛研修所戦史室『海軍捷号作戦(2)　フィリピン沖海戦』
防衛庁防衛研修所戦史室『潜水艦史』
ドナルド・マッキンタイヤー 著、大前敏一 訳『Leyte　レイテ　連合艦隊の最期・カミカゼ出撃』
* その他多数の書籍、論文、史料

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