ジョン・グラント

ジョン・グラント：統計学の先駆者

ジョン・グラント（John Graunt, 1620年4月24日 - 1674年4月18日）は、17世紀のイギリスで活躍した商人であり、統計学の創始者の一人としてその名を知られています。彼の研究は、現代の人口統計学の基礎を築いたと言っても過言ではありません。

生い立ちと青年期

1620年、ジョン・グラントはロンドンで、ヘンリー・グラントとメアリー・グラントの息子として生を受けました。父ヘンリーはハンプシャー出身で、ロンドンで毛織物商として成功を収めていました。ジョンは、少なくとも7人兄弟の長男として育ちました。幼少期から英語教育を受け、16歳頃からは父のもとで徒弟として商売の修行を始めました。しかし、彼は勉学への意欲を失わず、独学でラテン語やフランス語を習得し、ソッツィーニ派の文献を読み漁るなど、知識の幅を広げていきました。

1641年にはメアリー・スコットと結婚し、後に毛織物商組合の会員権を相続しました。彼は紳士用小間物商人として、1650年代にはロンドンの政財界で一定の影響力を持つようになっていました。サミュエル・ピープス、サミュエル・クーパー、ベンジャミン・ラドヤードなど、当時の著名人との親交も深めました。

『死亡表に関する自然的および政治的諸観察』

グラントの名を不朽のものとしたのは、1662年に発表された『死亡表に関する自然的および政治的諸観察』です。この著作で彼は、ロンドンの埋葬記録である死亡表を詳細に分析し、人間の出生と死亡には統計的な規則性が存在することを示しました。これは、統計学の黎明期において画期的な発見であり、その後の人口統計学の発展に大きく貢献しました。

具体的には、死亡原因の分析、男女間の出生比率の偏り、都市部と地方での死亡率の比較など、多岐にわたる分析を行いました。これらの分析を通じて、彼は社会現象の背後にある法則性を明らかにしようと試みたのです。この業績が認められ、グラントは王立協会の会員に推薦されました。

その後

1666年のロンドン大火は、グラントに大きな経済的打撃を与えました。彼は市議会議員を務めるなど政治的な活動も行っていましたが、大火による損失や不動産投資の失敗などにより、経済的に苦しい状況に陥りました。友人であるウィリアム・ペティの援助により邸宅は再建されたものの、バーチン・レーンの邸宅はペティに売却せざるを得ませんでした。

また、晩年にはカトリックに改宗したことも、彼の人生に影響を与えました。1674年には国教忌避法違反で告発されましたが、同年4月18日に黄疸で亡くなりました。彼の死後、財産は没収されましたが、ペティは未亡人となったメアリーを援助したと伝えられています。

ジョン・グラントは、単なる商人としてだけでなく、統計学の先駆者として歴史に名を刻んでいます。彼の死亡表の分析は、社会現象を科学的に分析する道を開き、現代の統計学や人口統計学の発展に不可欠な基礎を築きました。彼の功績は、今日においても高く評価されています。

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