ジョン・ド・ラ・ポール (初代リンカーン伯)

ジョン・ド・ラ・ポール、リンカーン伯（John de la Pole, Earl of Lincoln, 1462年～1464年 - 1487年6月16日）は、イングランドの貴族であり、ヨーク朝末期の動乱期に重要な役割を演じた人物です。彼の短い生涯は、王位継承争いと激しい政治闘争によって彩られました。

彼は第2代サフォーク公ジョン・ド・ラ・ポールと、ヨーク公リチャードとセシリー・ネヴィルの娘であるエリザベス・オブ・ヨークとの間に生まれた長男でした。後にサフォーク公となるエドムンド・ド・ラ・ポールは彼の弟にあたります。つまり、彼はヨーク家と深い血縁関係を持っていたのです。

母方の叔父にあたるリチャード3世の治世下、リンカーン伯はヨーク家の中で最もリチャード3世に近い成人男性とみなされました。そのため、リチャード3世が王位継承者として彼を指名する可能性もあったでしょう。しかし、1485年8月22日、ボズワースの戦いでリチャード3世はヘンリー・チューダー（後のヘンリー7世）に敗れ、戦死しました。

リチャード3世の死後、ヘンリー7世が即位しました。当初、リンカーン伯は新国王ヘンリー7世への服従を表明しました。しかし、王位への野望は彼の胸の奥底に深く根付いており、容易に消えることはありませんでした。

王位継承権を主張するウォリック伯エドワードを担ぎ出す計画が水面下で進められました。この計画には、エドワードに代わって王位を主張する替え玉が必要でした。そして、その替え玉として選ばれたのが、ランバート・シムネルという青年です。

リンカーン伯は、このシムネルを擁立し、ヘンリー7世の支配に挑戦しようとしました。ヨーク朝への支持を背景に、反乱軍は勢力を拡大させました。しかし、1487年、ストーク・フィールドの戦いで、リンカーン伯率いる反乱軍はヘンリー7世軍に敗北しました。この戦いで、リンカーン伯は戦死を遂げました。

リンカーン伯の死は、ヨーク朝復権の夢を完全に打ち砕く結果となりました。彼の反乱は短命に終わりましたが、ヨーク朝とランカスター朝の激しい王位継承争いの最終章を象徴する出来事として、イングランドの歴史に刻まれています。彼の短い生涯は、野望と裏切り、そして戦乱に満ちたものでした。イングランドの歴史、特に薔薇戦争後の動乱期を理解する上で、リンカーン伯ジョン・ド・ラ・ポールは欠かせない人物と言えるでしょう。彼の死後、ヨーク朝の王位継承問題に決着がつくまでには、まだ時間を要することになります。

歴史家たちは、彼の行動を野心家のものと捉える一方で、ヨーク朝の血統を守ろうとした忠誠心の表れであるとする見方もあります。いずれにしても、リンカーン伯の生涯は、中世イングランドの政治的混乱と、王位継承をめぐる激しい権力闘争を鮮やかに示す物語となっています。彼の死後も、イングランドの政治情勢は不安定な状態が続き、新たな混乱へとつながっていくのです。

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