ジョン・ニュートン

ジョン・ニュートン：回心と賛美歌、そして奴隷貿易廃止への貢献

ジョン・ニュートン（1725年8月4日 - 1807年12月21日）は、イギリスの船乗り、奴隷商人、そして最終的には聖職者という、異例の経歴を持つ人物です。彼が作詞した賛美歌「アメイジング・グレイス」は、世界中で愛唱されています。彼の人生は、罪からの回心、信仰による変革、そして社会正義への献身を示す物語として、今もなお人々に感銘を与え続けています。

生い立ちと船乗りとしての出発

1725年、ジョン・ニュートンはロンドンで、船乗りの父と敬虔なクリスチャンの母の間に生まれました。幼い頃に母を亡くし、父の再婚後、11歳で船乗りとしての生活を始めます。地中海での航海を経験し、14歳で生涯の伴侶となるメアリー・キャットリットと出会いました。

奴隷貿易への従事と回心

その後、ニュートンは強制的に海軍に徴兵され、後に奴隷貿易に関わるようになります。1748年、22歳の時、乗船していた船が嵐に見舞われ、難破の危機に瀕しました。この時、彼は幼い頃に亡くした母を思い出し、初めて神に祈りを捧げます。奇跡的に難破を免れたことで回心し、その後の人生を神に捧げることを決意しました。

1750年、メアリー・キャットリットと結婚。その後6年間、奴隷船の船長として、アフリカから西インド諸島へ奴隷を輸送する任務に従事しました。しかし、回心後も奴隷貿易に携わっていたことは、彼にとって大きな葛藤の種だったと考えられます。

関税職員から牧師へ

1755年、30歳で奴隷貿易から身を引き、リヴァプールの関税職員となります。ロンドンでジョージ・ホウィットフィールドやジョン・ウェスレーといった福音主義の指導者たちと出会い、彼らの影響を受けて牧師になることを志しました。しかし、聖職叙任は一度拒否されます。その後、ダートマス伯爵の尽力により、1764年にオウルニィの副牧師に就任しました。

オウルニィでの活動と「アメイジング・グレイス」の誕生

オウルニィでは、ウィリアム・クーパーという詩人との出会いが、ニュートンの人生に大きな影響を与えました。クーパーと共に、毎週の祈りの集会のために多くの讃美歌を作詞しました。1779年に出版された『オウルニィの讃美歌集』には、後に世界中で愛唱される「アメイジング・グレイス」が収録されています。

奴隷貿易反対運動への参加と晩年

1779年、ニュートンはロンドンのセント・メアリー・ウルノス教会の教区牧師に就任し、奴隷貿易反対運動に積極的に関わるようになります。ウィリアム・ウィルバーフォース下院議員に助言を与え、福音主義の立場から奴隷貿易廃止を訴えるよう勧めました。1807年、ニュートンが81歳の時、イギリスで奴隷貿易廃止法が成立。長年の悲願が成就するのを見届けました。

1807年、ジョン・ニュートンは82歳でその生涯を閉じました。彼の遺体は、妻と共にセント・メアリー・ウルノス教会の地下納骨所に埋葬されました。彼の名前は、シエラレオネの解放奴隷入植地にある町の名前に残されています。ジョン・ニュートンの人生は、回心と信仰の力、そして社会変革への貢献を示すものとして、今も多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

「アメイジング・グレイス」は、彼の人生そのものを歌った歌であり、歌詞には、かつて罪深い生活を送っていた彼が、神の恩寵によって救われた喜びと感謝が込められています。この歌は、人種や文化、時代を超えて、多くの人々の心を捉え、希望の光を灯し続けています。

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