ジョン・ハインド

ジョン・ラッセル・ハインド（John Russell Hind, 1823年5月12日 - 1895年12月23日）は、19世紀のイギリスを代表する天文学者です。その生涯において、天文学の発展に大きく貢献しました。

生涯と業績

ハインドは、グリニッジ天文台でジョージ・エアリーの下で天文学者としてのキャリアをスタートさせました。その後、ウィリアム・ドーズの後任として、ジョージ・ビショップ天文台の台長に就任し、観測活動を精力的に行いました。また、1853年から1891年まで、航海年鑑局の最高責任者として、航海に必要な天体暦の作成に携わりました。

ハインドの名前の綴りについて、いくつかの資料では「John Russel Hind」とミドルネームの末尾の「L」が一つだけのものが見られますが、19世紀のイギリスの天文雑誌では、一貫して「John Russell Hind」と二つ続けて表記されています。これは、当時の正式な表記を反映したものです。

ハインドの最大の功績の一つは、小惑星の発見です。彼は生涯で10個もの小惑星を発見し、初期の小惑星発見者の一人として名を馳せました。特に、第12番小惑星ビクトリアの命名者としても知られていますが、この命名は当時、議論を呼びました。当時、イギリスではビクトリアという名前は女王ヴィクトリアを連想させるものであったため、生存している人物の名前を小惑星に命名することには、さまざまな意見がありました。しかし、ハインドはビクトリアは女王にちなんだものではなく、ローマ神話に登場する勝利の女神ウィクトーリアにちなんだものであると主張しました。

小惑星の発見に加えて、ハインドは変光星の観測にも尽力しました。彼は、うさぎ座R星、おうし座T星、ふたご座U星などの変光星を発見し、ケフェウス座μ星（ガーネット・スター）が変光星であることを突き止めました。また、1848年にはへびつかい座で新星（Nova Ophiuchi 1848, V841 Oph）を発見しました。へびつかい座での新星発見は、1604年のケプラーの超新星以来のことでした。この新星の発見は、当時の天文学界に大きな衝撃を与えました。

ハインドの業績は、天文学の進歩に大きく貢献しました。彼は観測技術の向上に貢献しただけでなく、小惑星や変光星といった新しい天体の発見を通じて、宇宙への理解を深めることに大きく貢献しました。

受賞とエポニム

ハインドの業績は、生前から高く評価されていました。1851年、1852年、1854年にはラランド賞を受賞し、1853年には王立天文学会ゴールドメダル、1855年にはロイヤルメダルを受賞しました。また、1863年には王立協会のフェローに選出されています。

ハインドの偉大な功績を称え、彼の名前は月面にあるクレーター（ハインド）と、小惑星（(1897) ハインド）に付けられています。これは、彼の天文学への貢献が後世にまで語り継がれる証です。

まとめ

ジョン・ラッセル・ハインドは、卓越した観測眼と探求心を持ち、小惑星や変光星の発見を通じて、天文学の発展に大きく貢献した人物です。彼の発見は、現代の天文学においても重要な基礎となっています。ハインドの生涯は、天文学の歴史において、重要な一ページを刻んでいます。

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