ジョン・フィッシャー

ジョン・フィッシャー（1469年 - 1535年）は、イングランドの聖職者であり、カトリック教会と聖公会において聖人として崇敬されています。

生涯

イングランドのビヴァリーで生まれたフィッシャーは、ケンブリッジ大学で人文主義的な教養を深く身につけました。1501年には同大学の副総長に、1503年には神学教授、そして1504年には総長に就任し、大学運営の中心を担いました。また、1504年にはイングランド王ヘンリー7世によってロチェスターの司教にも任命されました。

フィッシャーが大学を指導していた時代は、学問研究が非常に盛んでした。彼は、1505年にヘンリー7世の母マーガレット・ボーフォートの支援を受けてクライスツ・カレッジを設立し、1511年にはセント・ジョンズ・カレッジの設立にも尽力しました。さらに、人文学者エラスムスをケンブリッジ大学に招聘するなど、学術の発展に大きく貢献しました。

ヘンリー8世の離婚問題が浮上すると、フィッシャーはトマス・モアと共に離婚に強く反対しました。さらに、ヘンリー8世がローマ教皇を頂点とするカトリック教会から分離し、自らを首長とするイングランド国教会を設立しようとした際にも、彼は断固として反対の立場を貫きました。これらの行動が原因で、フィッシャーは反逆者としてロンドン塔に監禁されることとなりました。

獄中においても、ヘンリー8世はフィッシャーに国教会の首長としての自分を認めるよう再三強要しましたが、フィッシャーは決して屈しませんでした。その不屈の態度がヘンリー8世の怒りを買い、最終的に斬首刑に処せられることとなりました。彼の首はロンドン橋に晒され、遺体はロンドン塔内に埋葬されました。処刑の直前には、ローマ教皇パウルス3世から枢機卿に叙任するという知らせがイングランドに届いていたという悲劇的な状況でした。

1886年、フィッシャーはモアと共に教皇首位権を擁護した殉教者として列福されました。そして、彼の死後400年となる1935年には、モアと共に列聖され、聖人としての地位を確立しました。

フィッシャーの生涯は、信仰に対する揺るぎない忠誠心と、不正に対する勇敢な抵抗を象徴しています。彼の学問への貢献と、宗教的な信念を貫いた生き方は、今日においても多くの人々に感銘を与え続けています。

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