ジョン・ブラックウッド・マキュアン

サー・ジョン・ブラックウッド・マキュアン

生涯とキャリア

サー・ジョン・ブラックウッド・マキュアン（1868-1948）は、スコットランド生まれの著名な作曲家であり、音楽教育者でした。ホーイックで生を受けた彼は、故郷グラスゴーで音楽の手ほどきを受けた後、ロンドンの王立音楽アカデミーに進み、エベニーザー・プラウト、フレデリック・コーダー、トバイアス・マッセイといった指導者たちのもとで研鑽を積みました。学業を終えた後はスコットランドに戻り、グリーノックやグラスゴーで合唱指導や教職に就きます。

彼のキャリアの重要な転機は、ロンドン王立音楽アカデミーに招かれたことでした。1898年から1924年まで和声学と作曲の教授を務め、その後1924年から1936年にかけてはアカデミーの学長として、イギリス音楽界の未来を担う教育の現場を率いました。また、マキュアンは音楽界の発展にも寄与しており、1905年にはフレデリック・コーダーやトバイアス・マッセイらと共に英国作曲家協会を設立したほか、音楽家団体法人の代表も務めています。これらの功績が認められ、1931年にはナイトに叙されました。彼は1948年 6月14日、ロンドンで80年の生涯を閉じています。

マキュアンはキャサリン夫人との間に、後に作曲家となった息子ジョンや娘アナベルをもうけました。さらに、作家の孫ジョン、作曲家のジャック・エチュ、ヴァイオリニストのソフィア・ルイズ、作曲家のジョゼフ、アラステアー・マキュアンといった孫たち、そしてチェリストのステファン・テトロールやヴァイオリニストのエムジュ・マキュアンといった著名な曾孫たちにも恵まれ、音楽や芸術との繋がりを持つ家系を築きました。

音楽スタイルと作品

マキュアンの音楽作品の中でも特に知られているのは、故郷スコットランドのガロウェイ地方に触発された管弦楽曲です。代表作には「ソルウェー交響曲」（1909年）、「ヒールズ・オ・ヘザー」、「野生のタイムが咲く場所」（いずれも1918年）などがあります。また、「スリー・ボーダー・バラード」としてまとめられた「グレイ・ガロウェイ」（1908年）、「悪魔の恋人」（1906-1907年）、そして「コロナック」（1906年）も挙げられます。ジョン・ミルトンの頌歌に基づく同名の讃美歌も重要な作品の一つです。多作な作曲家として、彼は1901年にはライオネル・ターティスのためにヴィオラ協奏曲を作曲したほか、1893年から1947年までの50年以上にわたり、番号付き17曲を含む合計19曲の弦楽四重奏曲を書き続けました。室内楽は彼の作品の中心を占めるジャンルと言えるでしょう。

特筆すべきは、「変化話法（inflected speech）」という独自の音楽概念を生み出したことです。これは声楽における表現技法であり、1943年にマーガレット・フォーブズの詩による「変化する声とピアノのための14の詩」でこの手法を応用しました。この技法は、アルノルト・シェーンベルクのシュプレッヒゲザングと比較されることがあります。

マキュアンの音楽には、スコットランドの民族音楽に加え、シベリウスやワーグナーからの影響が明確に見られます。例えば、「ソルウェー交響曲」の第3楽章にはワーグナー作品からの強い影響が指摘されています。しかし、彼の作品の大部分は独自の個性を放っており、特定の作曲家の影響を大きく受けているわけではありません。彼はスコットランドの民族音楽を自身の音楽に取り入れようとした「スコットランド・ルネサンス」の先駆者と見なされていますが、その民謡へのアプローチは感傷的なものではなく、より本質的な探求であったと言えます。

評価と再評価

非常に多くの作品を残したにもかかわらず、マキュアンの音楽は長年にわたり十分に評価されてきませんでした。1954年版のグローヴ音楽事典では、「同時代のイギリス作曲家の中で、おそらく最もひどく無視されている」と記されています。彼自身の作品に対する聴衆の関心を引くことに無頓着だった姿勢も、このような状況の一因となったようです。

しかし、1990年代初頭頃から、モーレイ・ウェルシュやチリンギリアン四重奏団による録音などを通じて、彼の音楽は新しい世代の聴衆に徐々に知られるようになりました。さらに、孫のジョセフや曾孫娘のエムジュといった家族が、オーケストラや四重奏団とのツアーで彼の埋もれた作品を積極的に演奏し、知名度向上に貢献しています。残念ながら、後期の一部の弦楽三重奏曲など、まだ録音されていない作品も存在します。

興味深い例として、彼の「交響曲イ短調」（1892-1898年作曲）は、出版社から原曲形式での出版を断られ、「弦楽四重奏としての方が好評を得られるだろう」との助言を受け、自身で改訂したものが「弦楽四重奏曲第2番イ短調」としてよく知られることになりました。近年まで、この作品は弦楽四重奏版として演奏されるのが常でしたが、指揮者兼チェリストのアラスデアー・ミッチェルによって交響曲版が復活演奏されました（2008年、エディンバラ）。また、弦楽四重奏曲「スレノディ」（第7番）は、2007年にゴードン・リグビーにより弦楽オーケストラ用に編曲され、スコティッシュ・フィルハーモニック管弦楽団によって演奏されています。これらの楽譜はスコティッシュ・ミュージック・センターから入手可能です。

マキュアンは、オペラ、管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲、ピアノ曲、声楽曲、合唱曲など幅広いジャンルにわたる楽曲を作曲したほか、「ハーモニーと対位法の教科書」や「音楽におけるフレーズ法」など、音楽理論や教育に関する著作も多数残しています。その多才な活動は、20世紀初頭のイギリス音楽史において、再評価されるべき重要な存在であることを示しています。

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