ジョン・ブロウ

ジョン・ブロウ

ジョン・ブロウ（John Blow, 1649年2月23日受洗 - 1708年10月1日）は、17世紀後半から18世紀初頭にかけて活躍したイングランドの重要な作曲家、およびオルガン奏者です。特に、同時代の偉大な音楽家であるヘンリー・パーセルやウィリアム・クロフトの師として知られています。彼の音楽は、イングランドのバロック音楽の発展において重要な役割を果たしました。

生涯と活動

ブロウの出生地は定かではありませんが、ノッティンガムシャーのコリンガムで生まれた可能性が高いと考えられています。幼い頃から王室礼拝堂の聖歌隊員として音楽的才能を発揮し、若くして頭角を現しました。初期の作品には、「主よ、あなたはわれらの避難所である（Lord, Thou hast been our refuge）」や「主よ、われを責めたもうな（Lord, rebuke me not）」といった聖歌があります。また、ペラム・ハンフリー、ウィリアム・ターナーとの共同制作による「われは常に感謝す（I will always give thanks）」は、いわゆる「クラブ・アンセム」として知られ、1665年のイングランドのオランダに対する勝利を記念したもの、あるいは三人の聖歌隊員の友情を称えたものと言われています。

この頃、ブロウはジャコモ・カリッシミの作品「Dite, o cieli」を模倣してロバート・ヘリックが作った「行け、偽誓者よ（Goe, perjur'd man）」を二部構成に編曲する作業も手がけました。1669年にはウェストミンスター寺院のオルガニストに就任。さらに1673年には王家礼拝堂のジェントルマン（音楽家）となり、同年9月にはエリザベス・ブラドックと結婚しましたが、彼女は結婚から10年後に出産時に亡くなっています。

1678年までには音楽学者としての地位を確立していたブロウは、1685年にはジェームズ2世付きの音楽家の一員となりました。彼の現存する唯一の舞台作品の記録は、1680年から1687年の間に制作された仮面劇「ヴィーナスとアドニス（Venus and Adonis）」です。この劇は国王を楽しませるために作られ、ヴィーナス役をメアリー・デイヴィスが、そして彼女とチャールズ2世の娘であるレディ・メアリー・テューダーがキューピッド役を演じたことで知られています。

ブロウはその後も精力的に活動し、1687年にはセント・ポール大聖堂の聖歌隊の指導者となりました。1695年にはウェストミンスターの聖マーガレット教会のオルガニストに選出され、同時期にウェストミンスター寺院のオルガニスト職に復帰したとされています（この職は1680年に彼がいったん退き、パーセルが引き継いでいました）。1699年には、新たに設けられた王家礼拝堂の作曲家という重要な地位に任命されました。

作品と評価

ブロウの作品は多岐にわたります。確認されているだけで14曲の典礼音楽と100曲以上の聖歌を含む、膨大な教会音楽を残しました。これに加え、新年用の頌歌や聖セシリア祭のための頌歌、ジェームズ2世の即位を記念する聖歌2曲、「音楽のはしため（Musick's handmaid）」（1689年）に収められた数曲のハープシコード作品、「女王メアリーのための挽歌」（1695年）、そして弟子のヘンリー・パーセルの死を悼む頌歌（1696年）といった世俗作品も数多く作曲しています。1700年には、通奏低音を伴う一声から四声までの声楽作品を集めた「アンフィオン・アングリカス（Amphion Anglicus）」を出版し、彼の声楽曲の代表的なコレクションとなりました。

後世におけるブロウの評価は様々です。例えば、チャールズ・バーニーの著書「音楽の歴史」では、ブロウの「未熟さ」について一定の記述が割かれています。バーニーは、その独特なスタイルが当時のイギリス音楽の特徴を示そうとする努力の結果であるとし、時にその試みが非常に優れたものである（バーニー自身が「我々はこの点に夢中である」と述べるほど）ことを認めています。

ジョン・ブロウは1708年10月1日、ブロード・サンクチュアリの自宅でこの世を去りました。彼の遺体は、長年オルガニストを務めたウェストミンスター寺院の北側廊に埋葬され、その功績を称えられています。彼の音楽は、ヘンリー・パーセルをはじめとする後進の作曲家たちに大きな影響を与え、イングランド音楽史において確固たる地位を占めています。

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