ジョン・ホイットギフト

ジョン・ホイットギフト：イングランド国教会の守護者

ジョン・ホイットギフト（1530年頃 - 1604年2月29日）は、テューダー朝からステュアート朝にかけてのイングランドで活躍した聖職者です。リンカン主席司祭、ウスター主教を経て、最終的にはカンタベリー大主教という最高位にまで上り詰めました。彼は、エリザベス1世のもとでイングランド国教会を擁護し、ピューリタン運動を厳しく弾圧したことで知られています。

生い立ちと初期のキャリア

ホイットギフトは、イングランド東部のリンカンシャー、グリムズビーで裕福な商人の息子として生まれました。ケンブリッジ大学を卒業後、1555年に同大学のフェローとなりました。カトリックのメアリー1世の治世下では、プロテスタントとしての立場から迫害を受ける可能性がありましたが、友人たちの保護により難を逃れました。

エリザベス1世が女王に即位すると、ホイットギフトは重用されるようになります。1560年に聖職者として叙任されると、1567年にはケンブリッジ大学の欽定神学教授とトリニティ・カレッジの学長に就任しました。しかし、1569年には欽定神学教授を辞任しています。この背景には、同僚のトマス・カートライトとの対立があったとされていますが、詳細は不明です。

カートライトとの対立

ホイットギフトは、カートライトを大学から追い落とすために積極的に動きました。1570年、エリザベス1世の許可を得て大学の副学長に選出されると、その権力を用いてカートライトをレディ・マーガレット神学教授の職から解任し、1572年にはフェローの地位も剥奪して大学から追放しました。その後もホイットギフトはカートライトを迫害し続け、1573年には新大陸への亡命を余儀なくさせ、1591年には投獄されていたカートライトを高等宗務官裁判所で審問しました。

国教会擁護者としての台頭

カートライトを没落させた後、ホイットギフトはイングランド国教会の擁護者として頭角を現します。エリザベス1世の信任を得て、1571年にリンカン主席司祭、1577年にウスター主教、そして1583年にはカンタベリー大主教に任命され、出世街道を駆け上がりました。

フランシス・ベーコンとの関係

トリニティ・カレッジ学長時代には、後の哲学者フランシス・ベーコンが兄のアンソニー・ベーコンとともに同大学に入学しています。ベーコンはわずか2年間しか在籍しませんでしたが、この期間にホイットギフトから指導を受けました。ホイットギフトの理性と知識を重視し、確かな証拠なしに議論しない姿勢は、ベーコンに大きな影響を与えました。ベーコンは、大学でアリストテレスの論理学への反感を抱くようになり、また、ホイットギフトが知識を公共活動に活かすことを重視したことから、キケロの『義務について』を読んだ可能性も指摘されています。

カンタベリー大主教としての活動

カンタベリー大主教に就任したホイットギフトは、エリザベス1世とバーリー男爵ウィリアム・セシルの宗教政策に協力し、国教会の教義の統一を推し進めました。彼は高等宗務官裁判所を用いてピューリタンを弾圧し、宣誓を強制することで聖職者の信仰を明らかにしようとしました。さらに、牧師の教区不在問題を解決するために、牧師を教区へ赴任させ、祈祷書と39箇条の遵守、祭服の着用と儀式の励行を聖職者に求めました。これらの強硬策は、議会内のピューリタン支持者だけでなく政府内部からも反発を招き、枢密院の査問を受け、強硬手段の撤回を余儀なくされました。穏健派のバーリー男爵からも非難され、かつての教え子ベーコンも女王への手紙でピューリタンの説教活動を擁護し、ホイットギフトの強硬手段から距離を置きました。

その後

1603年にエリザベス1世が亡くなると、ホイットギフトはジェームズ1世の戴冠式を取り仕切りました。翌1604年1月には、国教会とピューリタンの代表が集まったハンプトン・コート会議に国教会側の代表として出席しましたが、会議後間もなく亡くなりました。彼の死後、反ピューリタンとして知られるリチャード・バンクロフトが後任のカンタベリー大主教となり、国教会の統一とピューリタン、長老派の弾圧が続けられました。

ジョン・ホイットギフトは、その強硬な政策から批判も受けましたが、イングランド国教会の確立に大きく貢献した人物として歴史に名を残しています。

もう一度検索